第88回 シクロデキストリンを用いたゴボウ中のアルクチゲニンの特性改善を目的とした検討|株式会社シクロケムバイオ
株式会社シクロケムバイオ
日本語|English
研究情報
研究成果

第88回 シクロデキストリンを用いたゴボウ中のアルクチゲニンの特性改善を目的とした検討

概要

ゴボウの種子は牛蒡子と呼ばれ、生薬として利用されています。牛蒡子の主な活性成分はアルクチゲニン(ARG、図1)であり、ARGは抗炎症作用、抗HIV作用、抗がん作用、肝臓保護作用といった種々の生理活性を示すことが報告されています1)。また食品としてはゴボウスプラウトもARGを含んでいるため、今後、健康食品素材としての利用が期待できます。しかし、ゴボウスプラウトは強い苦味を示すこと、さらにARGは水溶性に乏しく、吸収性の低さが課題となっており2)、健康食品分野で利用するためには物性を改善する必要があります。
シクロデキストリン(CD)は脂溶性成分を包接することで、それらの水への可溶化や吸収性の向上、安定化、苦み・渋みのマスキング等の様々な機能を付与することができます。
そこで本研究では、ゴボウ中の機能性成分の特性改善を目的として、CDを用いたゴボウスプラウト中のARGの水溶性向上、ゴボウスプラウトの苦味の改善について検討しました。

図1. アルクチゲニンの構造
図1. アルクチゲニンの構造

実験

ゴボウの種子を暗所、室温下で9日間生育した。得られたゴボウスプラウトを全て回収し、適量の水を加えてミキサーで破砕したものへ、α-CD、β-CD、γ-CDを加えた。これらから水溶性画分(ゴボウスプラウト抽出液)をとり、HPLCでARGを分析した。また各サンプルの苦味についても評価した。

結果・考察

ゴボウスプラウト抽出液中のARG量を測定した結果、ゴボウスプラウトに対してγ-CDを添加した場合に、水のみと比較してARGの溶解度の向上が示された。一方で、ゴボウスプラウトに対してα-CDまたはβ-CDを添加した場合には、ARGの水への溶解量は水のみの場合と大きく変わらなかった。このことから、γ-CDを用いることでゴボウスプラウト中のARGの水溶性が向上することで低い吸収性が改善されることが期待できる(図2)。
次に、ゴボウスプラウトの苦味について、ゴボウスプラウトのみ、α-CDまたはβ-CDを添加したサンプルでは強い苦味を示すのに対し、γ-CDを添加したサンプルではその苦味が顕著に抑えられることがわかった。

図2. シクロデキストリンによるゴボウスプラウト中のアルクチゲニンの抽出
図2. シクロデキストリンによるゴボウスプラウト中のアルクチゲニンの抽出

まとめ

ゴボウスプラウトとγ-CDとの組み合わせは、1)苦味を抑え、2)高い吸収効率が期待できるアルクチゲニン含有素材として、新たな健康食品・飲料の開発にご利用いただけます。

参考文献

1) 畑直樹ら,Agriculture and horticulture, 86 (1), 10-20 (2011).
2) Cai E. et al., Sci. Rep., 8, 3307 (2018).
3) C. C. Ratnasooriya et al., Food Chemistry, 134, 625-631 (2012).