第103回 α-シクロデキストリンによる食品由来成分の腸管傷害に対する保護作用② ~脂質過酸化物~|株式会社シクロケムバイオ
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研究情報
研究成果

第103回 α-シクロデキストリンによる食品由来成分の腸管傷害に対する保護作用② ~脂質過酸化物~

概要

脂質過酸化物は、油脂の長時間の調理での使用や好ましくない保管状態によって油脂が酸化することによって生成されます。酸化した油脂を摂取すると、酸化ストレスを誘発することで、腸管細胞傷害を生じ、大腸がんなどの消化管疾患の発症につながります1)
α-シクロデキストリン(α-CD)は難消化性かつ発酵性の水溶性食物繊維であり、当社の検討では、α-CDがプレバイオティクス作用を介して腸管保護機能を有していることが示されています(詳しくは、当社ホームページの最新研究成果「第94回」を参照にして下さい)。
また、α-CDは脂肪酸を包接し、不溶性の包接体を形成することで、脂肪酸の生体への吸収を抑制することが報告されています2)(詳しくは、当社ホームページの最新研究成果「第77回」を参照にして下さい)。そのため、α-CDは脂質過酸化物を包接することで消化管への悪影響を低減できることが期待されます。そこで本研究では、脂質過酸化物のひとつである4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)が誘導する腸管細胞傷害に対するα-CDの添加作用について紹介します。

図1. 4-HNEの構造
図1. 4-HNEの構造

実験

ヒト結腸癌由来Caco-2細胞に4-HNEを24時間処置し、細胞毒性を評価した。次に細胞毒性がみられた4-HNE 500µMとα-CDを0.5、1、2、3mMとを同時に処置し、細胞毒性を評価した。さらに、他の水溶性食物繊維でも同様の検討を行った。

結果と考察

4-HNEは100µM以上の濃度でCaco-2細胞に対して細胞毒性を示した(図2)。さらに、4-HNEとα-CDを同時に処置すると、Caco-2細胞に対する4-HNEによる細胞毒性が低減された(図3)。

図2. 4-HNEによる細胞毒性
図2. 4-HNEによる細胞毒性
図3. 細胞毒性に対するα-CDの保護効果
図3. 細胞毒性に対するα-CDの保護効果

先の試験でα-CDが4-HNEによる細胞毒性を低減することが確かめられたので、他の水溶性食物繊維(イヌリン、グァーガム分解物、ラクトスクロース、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖)でも同様の効果があるかを検討した。4-HNE(500µM)ならびに各種水溶性食物繊維(α-CD 2mM相当の重量%)をそれぞれ添加し、Caco-2細胞に対する細胞毒性を評価した。その結果、α-CDが他の水溶性食物繊維と比較して最も細胞毒性を低減した(図4)。これらの結果から、α-CDが4-HNEを包接することにより、4-HNEの毒性を低減していることが示唆された。

図4. 4-HNEによる細胞毒性に対する各種水溶性食物繊維の効果
図4. 4-HNEによる細胞毒性に対する各種水溶性食物繊維の効果

まとめ

本研究により、α-CDが4-HNEによる細胞毒性に対して阻害効果を示すことがわかりました。この他にも、α-CDは酸化させたオレイン酸とリノール酸に対しても同様な効果を示すということを確認しております。
本研究により、加熱した脂質を多く含む揚げ物などの食品を摂取する際には、一緒にα-CDを摂取することで過酸化脂質が引き起こす腸管傷害から保護できることが期待されます。

参考文献

1) J. Agric, Food Chem 54, 4476-4481 (2006).
2) L. Szente. et al., J. Incl. Phenom. Mol. Recognit. Chem. 16, 339-354 (1993).