活性酸素の種類と活性酸素消去のための抗酸化物質について|株式会社シクロケムバイオ
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2014.5.19 掲載

活性酸素の種類と活性酸素消去のための抗酸化物質について

今回は、活性酸素にはどのような種類があり、それらの活性酸素消去のために有効な抗酸化物質にはどのようなものがあるかを紹介します。

先ず、活性酸素とはどういうものか・・・・・

“活性な酸素”という言葉が示すとおり、酸素分子よりも酸化力(酸化活性)が強い(高い)物質をいいます。活性酸素にはスーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、そして、一重項酸素が知られていますが、これらは『狭義の活性酸素』です。広義には不対電子を持った分子や原子であるフリーラジカルも含めて酸素原子がなくても、強い酸化力を持ち、生体に有害であれば(広義な意味で)活性酸素です。よって、不倫相手は広義な意味での活性酸素ということになります。

ではそれぞれの活性酸素はどう違うのか・・・・その前に酸素分子とは・・・・

活性酸素の種類を説明するためには、まず酸素分子を理解してもらう必要があります。一般に原子は原子核の周りに複数の電子軌道をもっていて、その軌道に電子が2個ペアで揃って入っていれば安定化しています。ペアでない1個の電子を不対電子とよびますが、この不対電子は不安定で、他の分子から電子を奪って安定化しようとしています。つまり、不対電子はいつもパートナーの電子を求めている独り者なのです。ここで、不対電子をもつ活性酸素を不倫相手にたとえた意味が分かっていただけると思います。酸素分子は酸素原子が二つ結合したもので、2個の不対電子がペアを形成しますが、残りの2個の不対電子はそのまま不対電子で残った状態で存在しています。(不倫相手についての説明は、酸化と還元、活性酸素と抗酸化物質、そして酸化型CoQ10と還元型CoQ10をご参照下さい。)

ということで、一つ目の活性酸素、スーパーオキシドとは・・・・

酸素分子が他の分子から電子を1個奪っている状態です。よって、不対電子は1個だけで、酸素に比べると高い反応性をもったフリーラジカルです。スーパーオキシドは、ミトコンドリアにおけるエネルギー産生の際に大量に発生していますが、他の活性酸素に比べると酸化活性はそれほど高くありません。このスーパーオキシドは、体内に存在するスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)という抗酸化酵素で還元され過酸化水素となります。

では、その過酸化水素とは・・・・・

不対電子が電子をもらい、ペアとなっていますので、フリーラジカルではありません。しかし、生体に障害を及ぼすほどのスーパーオキシドよりも高い酸化活性を持っています。この過酸化水素は、鉄イオン存在下で、凶暴なヒドロキシラジカルへと変換されます。過酸化水素は不対電子を持っていないため安定な物質ですので、移動も容易で生体膜を通過できます。細胞内でヒドロキシラジカルに変化して細胞を損傷させることができます。つまり、過酸化水素は人の良さそうな営業マンのふりをして他人の家に入る強盗といえます。過酸化水素もスーパーオキシドと同様に体内で発生するものですので、生体内防御のため、生体内抗酸化酵素のカタラーゼペルオキシターゼによって水と酸素に分解されます。

その最も凶暴なヒドロキシラジカルとは・・・・・・・

ヒドロキシラジカルは、前述の過酸化水素から鉄や銅などの金属イオンが触媒となって変換される、あるいは、酸素分子から紫外線によって生成される酸化活性の非常に高いフリーラジカルです。このフリーラジカルの寿命は、100万分の1と短いのですが、活性酸素の中でも最も活性が高いことから生体内のタンパク質、脂質、DNAなどをいとも簡単に酸化させ、がん細胞の発生や老化、様々な生活習慣病の原因となっています。

ヒドロキシラジカルは細胞膜のリン脂質を酸化すると、リン脂質自体がフリーラジカルとなって、次のリン脂質を酸化するという連鎖的な脂質の過酸化反応を起こします。その結果、細胞膜が壊れ、細胞が死滅したり、DNAを損傷し、変異して、がん細胞が発生することもあります。

スーパーオキシドはSODという抗酸化酵素が、そして、過酸化水素はカタラーゼ、ペルオキシターゼという抗酸化酵素によって消去できますが、ヒドロキシラジカルの消去に有効な抗酸化酵素はなく、生体内で作られているグルタチオンR-αリポ酸コエンザイムQ10などの抗酸化物質によってヒドロキシラジカルは消去されます。

そして、残りの(肌の老化に関わる)一重項酸素とは・・・・・

一重項酸素は、ヒドロキシラジカルと同様に酸素分子から紫外線によって生成します。酸素分子の2個の不対電子がペアになった構造をしていますのでフリーラジカルではありません。しかし、不対電子が存在していた軌道に電子がないため、その空軌道は2つの電子を必要としています。よって、一重項酸素は高い酸化活性を有しており、脂質を酸化するだけでなく、真皮では、肌の張りに関与するコラーゲンタンパク質を酸化分解するため、しわの発生に関与しています。アスタキサンチンは、他の抗酸化物質と比較して非常に優れた一重項酸素消去活性を有していることが2007年のNishidaらの報告で明らかになっています。

また、表皮では一重項酸素を生成する有害な紫外線から肌を守るため、色素細胞(メラノサイト)がメラニンという色素を合成しています。日光を浴びて皮膚が褐色に変化するのはこの色素によるものです。通常なら、メラニンは皮膚の新陳代謝であるターンオーバーにより、約28日間で古い細胞とともに垢として剥がれ落ちますが、老化、ストレス、食生活の乱れ、疲労などによって新陳代謝が正常に行われなくなると、過剰なメラニンの沈着が起こり、シミやソバカスの原因となります。このようなメラニン合成をδトコトリエノール(δT3)が抑制することが分かっており、δT3はシミやソバカスの予防・改善にきわめて有効であり、美白作用のあることも報告されています。