緑の香り(青葉アルコール)のシクロデキストリン水溶液による脳内機能改善|株式会社シクロケムバイオ
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研究情報
今、注目していること
2015.6.15 掲載

緑の香り(青葉アルコール)のシクロデキストリン水溶液による脳内機能改善

青葉アルコールを主成分とする緑の香りに学習意欲、学習能力の向上などの生理作用があり、ストレスにも感応し、ストレス解消や疲労回復に有用なことが複数の研究によって徐々に明らかとなり、近年、受験生を持つ両親や認知症の危険性のある高齢者がいる家族に朗報…と、その注目度はにわかに上昇しています。

先ずは、学習能力の向上に関する研究から…

サルに緑の香り(青葉アルコールと青葉アルデヒドの混合物)とサルの好物のバナナの香り(イソアミルアセテート)、そして、酢酸の三種類の匂いを嗅がせて(暴露して)脳の異なる部位の血流の変化を確認したSasabeらの研究報告があります。

その結果、嗅覚(化学物質を感知して脳で匂いとして認識する感覚)に関与している大脳嗅覚皮質においては、コントロールの純粋な空気に比較して、三種の匂い物質(揮発性化学物質)の匂いを嗅がせた際にその部位の血流はすべて上昇しました。しかし、大変興味深いことに、学習、特に努力が必要な課題等の問題解決に関与する脳の部位である前帯状皮質(ACG)では、サルの大好きなバナナの香りではなく、緑の香りを嗅いだときにのみ有意に血流が上昇していたのです。

図1. サルが三種の臭い物質を嗅いだときの各部位の大脳血流(rCBF)
図1. サルが三種の臭い物質を嗅いだときの各部位の大脳血流(rCBF)

実際のPET(陽電子放射形コンピューター断層撮影)写真があります。緑の香りによってサルの大脳前帯状皮質の活性化しています。(図2の説明:前帯状皮質(ACG)からの水平面(H)と上下面(S)スライス評価において緑の香りによってサルの大脳の前帯状皮質(ACG)の血流が増加している。T-Value:色度、IFG:下前頭回、L:左、R:右)

図2. 緑の香りによるサルの大脳前帯状皮質の活性化(陽電子放射形コンピューター断層撮影(PET)検査)
図2. 緑の香りによるサルの大脳前帯状皮質の活性化
(陽電子放射形コンピューター断層撮影(PET)検査)

次に、ストレス解消に関しては、Nakajimaらの研究報告があります。マウスにストレスをかけて副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の変化と体温の変化をみています。尚、血漿中のACTHはストレスを受けると上昇しますので、抑制できればストレスが軽減できていることが分かります。結果、緑の香りを嗅ぐことによるACTHの分泌抑制、ならびに、体温の上昇抑制が確認され、緑の香りに即時的かつ長期的にストレス軽減作用のあることが判明しています。

さらに、疲労回復に関する研究としては、マウスの強制遊泳試験で緑の香りを嗅いだマウスが、嗅いでいないマウスに比べ3倍運動量が増加することが判っています。

このように緑の香りは、他の香りに比べて顕著な脳内機能の改善効果が示されていますが、この緑の香りは揮発性物質ですので、常時、その香りを嗅ぐことはできません。そこで、シクロデキストリンで緑の香りの主要成分である青葉アルコールを包接した水溶液のスプレー製品が開発されました。

通常のエタノール製剤とシクロデキストリン水溶液の徐放特性が検討されています。(図3)不織布に青葉アルコールCD水溶液とエタノール製剤を噴霧した直後から7日後までの揮発性物質の徐放特性をSPME分析により評価しています。温度と湿度をコントロールしていない実験手法では正確な徐放速度を決定することはできません。しかし、青葉アルコールをエタノールに溶かした製剤スプレーでは、1日経つと青葉アルコールは揮発して完全に消失することが確認できます。その一方で、シクロデキストリンで青葉アルコールを水に溶かしたスプレーを噴霧した場合には、噴霧直後はエタノール製剤よりも匂いの強度は低いのですが7日間後も青葉アルコールの香りを徐放していることがわかります。

図3. 青葉アルコールCD包接体徐放特性
図3. 青葉アルコールCD包接体徐放特性

よって、このスプレーを部屋のカーテンや壁紙に定期的に噴霧しておくと、常時、緑の香りを嗅ぐことが可能となり、脳機能改善によって、受験生は学習意欲の向上とともに学習能力が向上し、高齢者にとっては認知症の予防になると考えられます。