R-αリポ酸の効能とS-αリポ酸の毒性に関する論文の要約と考察(15)|株式会社シクロケムバイオ
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2019.1.8 掲載

R-αリポ酸の効能とS-αリポ酸の毒性に関する論文の要約と考察(15)

R-αリポ酸の効能について紹介しています。今回は、R-αリポ酸の抗酸化作用による皮膚炎の消炎効果の検証についての報告を紹介します。

紫外線によって生み出された活性酸素種は皮膚から分泌される脂質を皮膚に障害を与える過酸化脂質に変え、皮膚を刺激して炎症を発生させ、皮膚の状態を悪化させます。そして、活性酸素種による皮膚の酸化が進むとシワやシミを誘発し、肌は老化していきます。特に、脂漏性皮膚炎の方々は脂質の代謝が悪いので、紫外線や活性酸素種の影響を受けやすいといえます。
活性酸素種による皮膚の炎症に対し、生体内の抗酸化物質には皮膚の保護作用を持つ物質がありますが、中でも、R-αリポ酸は最も優れた抗酸化作用を持つ物質の一つです。そこで、R-αリポ酸の抗酸化作用による皮膚炎の消炎効果を検証しています。

Antioxidant Inhibition of Skin Inflammation Induced by Reactive Oxidants: Evaluation of the Redox Couple Dihydrolipoate/Lipoate
(活性酸素によって引き起こされる皮膚炎を阻害する抗酸化剤:レドックス対ジヒドロリポ酸塩/リポ酸塩の評価)
J. Fuchs, Skin Pharamcol., 7, 278-284 (1994)

この論文では、グルコースオキシダーゼ(GOD)というブドウ糖を酸化する酵素を用いヘアレスマウスに皮膚炎を誘発させて、R-αリポ酸塩とS-αリポ酸塩の皮膚炎の阻害効果を検討しています。

ヘアレスマウスに14日間に渡ってR-αリポ酸塩(0.15wt%)を配合した飼料1.5gを与えた群(n=7)、S-αリポ酸塩を配合した飼料を与えた群(n=7)、標準飼料を与えた群(n=7)に分け、それぞれの群のGOD誘発皮膚炎の炎症反応を調べたところ、R-リポ酸塩を摂取した群ではGOD誘発性の皮膚炎を有意に阻害し、S-リポ酸塩群では阻害効果は認められないことが判明しました。

図1. R-αリポ酸の皮膚炎症に対する阻害効果
図1. R-αリポ酸の皮膚炎症に対する阻害効果

この結果は、ジヒドロリポアミド脱水素酵素による還元反応は立体選択的にS-αリポ酸ではなくR-αリポ酸のみを還元するためと推察されています。R-リポ酸塩はフリーラジカルや活性酸素種等によって誘発される炎症を伴う皮膚病の処置に有用だと考えられます。