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難消化性αオリゴ糖を用いるフレッシュパウダーの候補(1)スイカ

前シリーズでは難消化性αオリゴ糖のスーパー食物繊維としての健康増進効果について紹介しました。難消化性αオリゴ糖は環状のオリゴ糖ですので、その特徴を活かして、さまざまな野菜や果物の機能性成分を安定化させてフレッシュなままに粉末化できる用途があります。その一連のαオリゴ糖粉末はフレッシュパウダーと呼ばれています。

また、難消化性αオリゴ糖の環状オリゴ糖としてのもう一つの用途に、ヒトの体に有用な中鎖脂肪酸トリグリセリドやオリーブオイルなどと組み合わせたエマルション(乳状液)がありますので、このフレッシュパウダーは人工の乳化剤を使用しているさまざまな食品への利用も可能となります。

今回はフレッシュパウダーの候補としてスイカを挙げますが、その前に、食品に利用されている人工の乳化剤の問題点に触れておきます。

人工的に合成した食品添加物である乳化剤は、現在、アイスクリーム、ドレッシング、缶コーヒー、パン、チーズ、バター、マーガリン、ケーキ、ホイップクリームなど、実に多くの食品に利用されています。しかし、その乳化剤が下痢の原因となっているのです。乳化剤とは水と油のように通常は混合できない物質同士を物質の表面(界面という)に働きかけて、その性質を変えて均一に混合させることのできる界面活性剤のことです。

界面活性剤はタンパク質を変性させる性質があり、食品添加物として使用されるシュガーエステルなどの乳化剤にもタンパク質であるリパーゼ等の消化酵素を変性させてしまい、その結果、大量に使用すると下痢となることが知られています。

また、食品への乳化剤使用によるタンパク質変性は腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病などの難病の増えた要因の一つとしても考えられています。腸が障害を受ける乳化剤を摂り続けることによって、乳化剤が製造されていなかった時代には見られなかった腸内の重篤な病気になる可能性も指摘されているのです。

食品用乳化剤の一つであるシュガーエステルはショ糖(砂糖)と脂肪酸から合成されている乳化剤です。よって、現在、この問題のシュガーエステルを難消化性αオリゴ糖で代替する研究が盛んに行われているのです。

では、本題のフレッシュパウダーの原料候補のスイカについて説明していきます。

スイカの栄養成分としては、リコピン、β-カロテン、ビタミンC、カリウム、シトルリン、そして、糖質分解酵素であるマンノシダーゼが知られていますが、その中でも、シトルリンとリコピンが注目されています。そして、その健康増進効果には、抗糖化、利尿作用、疲労回復、血流改善、血糖値上昇・吸収抑制作用があります。

シトルリンはスイカから発見された物質であり、スイカに100g中180mgと圧倒的に多く含まれています。その他、メロン(50mg/100g)やキュウリ(10mg/100g)とウリ科の植物にも多く含まれています。

シトルリンは運動能力の向上、冷えやむくみの解消、肌の潤いを保つ効果などがあります。シトルリンを摂取することで、体内の一酸化窒素(NO)濃度が上昇します。その結果、NOの血管拡張作用によって、血流量が増加し、運動のパフォーマンスが上昇するのです。また、成長ホルモンの分泌促進、筋肉の分解抑制と合成促進といった働きもあります。さらに、シトルリンの女性に嬉しい効果として、肌のツヤやハリを維持する作用があります。これはシトルリンが肌の潤いを保つための天然保湿因子(NMF)として働くためなのです。

次に、スイカに含まれるもう一つの機能性栄養素であるリコピンについて論文を紹介します。スイカのリコピン含有量をトマトと比較したUSと韓国の研究があります。

US
Carotenoid Content of U.S. Foods: An Update of the Database
J. M. Holden, et al., Journal of Food Composition and Analysis 12, 169-196 (1999)

韓国
Carotenoids and total phenolic contents in plant foods commonly consumed in Korea
Gun-Ae Yoon et al., Nutrition Research and Practice 6(6), 481-490 (2012)

トマトよりもスイカの方がリコピンを多く含んでいることが何れの報告からも明らかとなっています。USでは、スイカ100g中に4.868mgのリコピンを含んでいて、トマト100g中には3.025mgでした。また、韓国では、スイカ100g中に3.33mgのリコピンを含んでいて、トマト100g中には1.94mgでした。韓国の方が少し低めに出ていますが、その傾向は同じでした。

どうも日本人はあるトマトジュースのメーカーにトマトにリコピンが多いというイメージを付けられてしまったようです。実は、スイカの方が多く、2切れのスイカ(200g)を食べれば一日の理想的なリコピン量を摂ることができる計算になります。

また、スイカとトマトのリコピンの吸収量の比較をした論文もありました。

Consumption of Watermelon Juice Increases Plasma Concentrations of Lycopene and beta-Carotene in Humans
Alison J. Edwards et al., Human Nutrition and Metabolism

トマトからのリコピン吸収は、熱やホモジナイザーによって細胞壁破壊プロセスを通して高められることが知られています。熱処理なしのスイカジュースと加工時熱処理ありの市販トマトジュースのリコピン吸収量を評価しています。

健康な36-69歳の男性12名女性12名が被験者としていましたが、試験前に1名が脱落し、試験中、C-0およびW-20群で1名ずつが離脱しています。残りの方々は管理された体重維持食を摂取し、毎食後に、試験サンプルを摂取してもらっています。

試験サンプルとして、スイカジュース(W)の方は種なしスイカをプレスジューサーにて絞り、高密度ポリエチレンに瓶詰めし、低温殺菌なしで直ちに凍結させたものを使用し、トマトジュース(T)の方は市販の缶詰トマトジュースを使用しています。

① C-0:基本食のみ
② W-20(780g):基本食+20.1mg / リコピン、2.5mg /β-カロテン
③ W-40(1560g):基本食+40.2mg / リコピン、5.0mg /β-カロテン
④ T-20(244g):基本食+18.4mg / リコピン、0.6mg /β-カロテン
(クロスオーバー、4つの内3つ摂取(①②必須, ③④一方)、反復測定、19週以上)

検討結果、熱処理なしのスイカジュースと加工時熱処理されたリコピンが豊富な市販トマトジュースのリコピン吸収量を評価した結果、何れのジュースを摂取しても血漿中のリコピン濃度は高まることが示されています。

図1. スイカジュースとトマトジュース摂取による血漿リコピン濃度の変化
図1. スイカジュースとトマトジュース摂取による血漿リコピン濃度の変化

また、同様にスイカやトマトに含まれるβ-カロテンはトマトジュースでは血漿中濃度の増加は確認できず、スイカジュースで濃度の高まることが示されています。

図2. スイカジュースとトマトジュース摂取による血漿β-カロテン濃度の変化
図2. スイカジュースとトマトジュース摂取による血漿β-カロテン濃度の変化

このようにスイカは健康増進効果のある機能性栄養素のシトルリンやリコピンを高濃度に含有しています。特に、リコピンは同じ100gのトマトとスイカを比較して、スイカの方が多く含有しています。しかし、スイカは夏季に植生する植物ですので、年中、食することができないため、マルトデキストリンを用いてスイカの粉末化を検討した論文があります。

The physicochemical properties of spray-dried watermelon powders
S. Y. Quek et al., Chemical Engineering and processing 46, 386-392 (2007)

スイカの噴霧乾燥による粉末化方法
スイカ3つを3cm立方体に切断し、総重量3000gとした。ミキサーにて混合し、メッシュを通して真空ろ過し、約1800mLの溶液を得た。冷蔵庫に1時間保存後、透明な上層(約400mL)を除去した。重量に応じて、マルトデキストリン(3%および5%)を添加した。噴霧乾燥後、瓶に密閉し、暗所4℃で保存した。噴霧乾燥条件は、吸引速度60%, 流速600L/h, 圧力4.5, 供給温度20℃とし、噴霧乾燥温度は、それぞれ、145, 155, 165, 175℃とした。

上記方法で粉末化を検討した結果、マルトデキストリンを添加しない場合、堅く非常に強い粘着性物質となり、回収出来ませんでした。一方、マルトデキストリン添加により、粉末の状態は改善し、3%より5%で良好な粉末となっています。

図3. マルデキストリンの添加量の違いによる粉末の状態
図3. マルデキストリンの添加量の違いによる粉末の状態

また、噴霧乾燥時の温度の上昇でリコピンとβ-カロテンの含有量は減少することが分かりました。この減少は熱分解と酸化反応によるものと考察されています。噴霧乾燥時の温度は155℃で色も粉末状態も良好であり、165℃を超えると糖の褐変が原因で褐色化すると同時に、リコピンとβ-カロテンの含有量も減少するようです。

表1. 粉末乾燥温度によるリコピンとβ-カロテンの含有量の変化
表1. 粉末乾燥温度によるリコピンとβ-カロテンの含有量の変化

この結果から、今後の熱分解や酸化安定性の改善を目的とした難消化性αオリゴ糖を用いたスイカのフレッシュパウダーの検討が期待されます。

掲載日:2019.5.22
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