冠動脈疾患における腸内細菌の影響|株式会社シクロケムバイオ
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冠動脈疾患における腸内細菌の影響

2019年1月20日、日曜日朝7時からのTBS系の健康番組『健康カプセル!ゲンキの時間』は「腸内細菌と動脈硬化の意外な関係」について取り上げていました。

その番組に出演されていた神戸大学医学部の山下教授によると、健康な人と心筋梗塞など心疾患を患っている人の便でリポ多糖(LPS)の量を調べたところ心疾患の人の方が多かったそうで、LPSが炎症を起こしやすくする物質を活性化し、血管内で炎症を起こし、動脈硬化が進行することが判っているとのことです。

そして、このLPSに対抗するのがバクテロイデスという腸内細菌だそうです。最近の研究で、バクテロイデスの量は、LPSと逆で、健康な人で多く、心筋梗塞などを発症した人は少ないということが分りました。つまり、バクテロイデスが多い人ほど動脈硬化になりにくい可能性があります。そして、バクテロイデスを増やす方法は食物繊維を多く摂ることであり、心筋梗塞や脳梗塞を予防する為には食物繊維を多く摂りましょう、といった内容でした。

そこで、山下教授の研究内容をもう少し詳しく調べてみることにしました。

2018年に「Bacteroides vulgatus and Bacteroides dorei Reduce Gut Microbial Lipopolysaccharide Production and Inhibit Atherosclerosis (バクテロイデス・ブルガタスおよびバクテロイデス・ドレイは腸内細菌によるLPS産生を減少させてアテローム性動脈疾患を抑制する)」というタイトルの論文が出ていました。(Circulation 2018; 138:2486-2498. DOI: 10.1161.)

健常者とCAD患者の細菌叢を比較したところ、CAD患者のバクテロイデス属が減少傾向にあり、中でも優位種であるバクテロイデス・ブルガタスとバクテロイデス・ドレイの割合が低下していたことから、このバクテロイデス2種の検討を行ったとのことです。

図1. 健常者とCAD患者の腸内細菌叢のバクテロイデス属の比較
図1. 健常者とCAD患者の腸内細菌叢のバクテロイデス属の比較

まず、動物試験です。アテローム性動脈硬化モデルのApo E KOマウスを用いて、週に5回、バクテロイデス・ブルガタスとバクテロイデス・ドレイの生菌(2.5x109 cfu/100 μL)を強制投与したLB群とその加熱殺菌した死菌を強制投与したコントロール群で比較したところ、LB群ではアテローム性動脈硬化病変サイズやプラークの形成が減少していました。

図2. バクテロイデス強制投与による動脈硬化病変サイズとプラークの減少
図2. バクテロイデス強制投与による動脈硬化病変サイズとプラークの減少

LB群において血漿中および糞便中のLPS量は顕著に減少すること、そして、炎症性サイトカインのTNF-αも顕著に減少することが判明しました。

図3. バクテロイデス強制投与による血漿中および糞便中のLPSの減少
図3. バクテロイデス強制投与による血漿中および糞便中のLPSの減少
図4. バクテロイデス強制投与による炎症性サイトカインの減少
図4. バクテロイデス強制投与による炎症性サイトカインの減少

さらに、この論文では、血中のLPS量が減少し、TNF-αが減少する理由として、バクテロイデス・ブルガタスとバクテロイデス・ドレイの生菌を強制投与することで腸管バリアが増大したためであることも明らかとしています。

以上のように、バクテロイデスはLPS産生を低下させ、腸管バリアを増強させることで、血中への流入を抑制し、冠動脈での炎症やアテローム性動脈硬化病変サイズおよびプラークの形成を抑えて、動脈硬化を予防できる腸内細菌であることが分りました。

私の研究室では食物繊維であるαオリゴ糖の研究を行っています。以前、マウスを用いて通常食餌群、高脂肪食餌群、そして、αオリゴ糖を加えた高脂肪食群に分けて、腸内の短鎖脂肪酸と腸内細菌がどのように変化するかについて検討をしています。高脂肪食餌摂取条件において、αオリゴ糖を添加すると盲腸内容物中の総短鎖脂肪酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、イソ吉草酸が増加することを確かめています。

図5. 腸内の短鎖脂肪酸量に対するαオリゴ糖摂取の影響
図5. 腸内の短鎖脂肪酸量に対するαオリゴ糖摂取の影響

そして、αオリゴ糖を添加した高脂肪食餌摂取で腸内細菌叢の乱れを抑制し、バクテロイデス属が増殖することも明らかとしています。

図6. 腸内細菌叢に対するαオリゴ糖摂取の影響
図6. 腸内細菌叢に対するαオリゴ糖摂取の影響

山下教授の研究論文と私の研究室の結果を合わせるとαオリゴ糖を摂取すると腸内のバクテロイデスが増加し、動脈硬化を予防できることになります。そして、実は、そのことを証明するような論文もあるのです。以下の記事でも紹介しています。
αオリゴ糖は腸内フローラを良い状態に変えて動脈硬化を防ぐ

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