小型LDLコレステロールについて(1)小型LDLとは|株式会社シクロケムバイオ
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2019.9.26 掲載

小型LDLコレステロールについて(1)小型LDLとは

LDLコレステロールは悪玉コレステロールと呼ばれ、従来から健康リスクの指標とされてきましたが、注目すべき真の悪玉コレステロールは小型LDLコレステロールであることが、昭和大学医学部の平野勉教授の研究グループを中心に幾つかの国内外の研究グループによって明らかにされてきています。

平野教授は「日本総合健診医学会」や「日本人間ドック学会学術大会」で研究内容を報告し、小型LDLコレステロールの量が冠動脈疾患と密な関係を持っていて、健康診断では、これからの診断と治療の指標として鋭敏なリスクマーカーの小型LDLコレステロールの測定を提案しています。

これまでの研究から小型LDLコレステロールが真のリスク因子であり、大型LDLコレステロールはリスク因子ではなく、HDLコレステロールと同様になくてはならないものなのです。したがって、小型LDLコレステロールに大型LDLコレステロールを足したLDLコレステロールは健康リスクの指標にすべきではないのです。

そこで、小型LDLコレステロールとは、いったいどのようなものか、そのリスクマーカーとしての鋭敏さはこれまでの研究からどこまで分かっているのか、小型LDLコレステロールが多いとどれほど危険なのか、小型LDLコレステロールが多いために冠動脈疾患を患った際の医薬品による対処法にはどのようなものがあるか、そして、小型LDLコレステロールが多いことが健康診断で判明した際の未病患者に対する機能性食品による対処方法にはどのようなものがあるかなどについて、医師や薬剤師等の専門家に向けてではなく一般の方々に分かりやすく概説していきたいと思います。

まず、LDLの説明です。LDLとは低密度リポタンパク(Low Density Lipoprotein)の略でリポタンパクと呼ばれている粒子の1種類です。リポタンパクの構造は(図1)のように水に溶けない油であるコレステロールエステル(CE)とTG(中性脂肪、トリアシルグリセリン)を中心に、両親媒性のリン脂質やアポリポタンパクによって覆われたミセル粒子です。

図1. リポタンパクの構造
図1. リポタンパクの構造

そして、血中には大きく分けて4種類のリポタンパクがあると分類されてきましたが、その内の一つであるLDLを大型LDLと小型LDLに分けるとカイロミクロン、VLDL(Very Low Density Lipoprotein)、大型LDL、小型LDL、HDL(High Density Lipoprotein)の5種類に分類できます。コア成分のコレステロールエステル(CE)とトリアシルグリセリン(TG)は密度が1.0より小さく、表層成分のリン脂質、アポリポタンパク、遊離コレステロールは密度が1.0より高いため、サイズと密度の間は反比例の関係になります。

図2. リポタンパクの大きさと密度
図2. リポタンパクの大きさと密度

LDL粒子には1個ずつApoBという巨大タンパクが存在していて、ApoBの値はLDL粒子数を表しています。そのLDLのサイズで25.5nmより小さいものを小型LDL、25.5nmよりも大きいものを大型LDLと呼び、人によって大型LDLと小型LDLの比は異なっています。大型LDL比率の高い人をPattern A、小型LDL比率の高い人をPattern Bに分類すると、Pattern Bの人はPattern Aの人より冠動脈性心疾患(CHD)の発症率は3倍高いという試験結果が報告されています。

図3. 新しい動脈硬化の危険因子:小型LDL
図3. 新しい動脈硬化の危険因子:小型LDL
図4. 小型LDL比の高い人の心筋梗塞発症率は3倍
図4. 小型LDL比の高い人の心筋梗塞発症率は3倍

では、なぜ小型LDLはCHD発症率を高めるのでしょうか?

小型LDLは大型LDLに比べ血管内皮に付着しやすい性質を持ちます。そして、小型であるため血管内皮細胞の隙間から入り込み、病的な内皮と小型LDLとの接触によって酸化LDLという異物に変化します。その異物を貧食したマクロファージは泡沫細胞に変化して血管壁に蓄積し、動脈硬化・プラークとなっていくというメカニズムです。

図5. 小型LDL比が動脈硬化を引き起こすメカニズム
図5. 小型LDL比が動脈硬化を引き起こすメカニズム