ニュージーランド産プロポリスに含有するCAPEのγオリゴ糖による抗がん作用の向上|株式会社シクロケムバイオ
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ニュージーランド産プロポリスに含有するCAPEのγオリゴ糖による抗がん作用の向上

前回の「ニュージーランド産プロポリスによる神経線維腫症の改善効果とは」では、ニュージーランド(NZ)産プロポリスに含まれるコーヒー酸フェネチルエステル(CAPE)には、腫瘍の成長に関わる特別なキナーゼ(酵素)であるPAKの働きを遮断する作用、つまり、PAK遮断作用のあることから、NZ産プロポリスが神経線維腫症(NF)の予防や治療に有用であるとのマウス実験の研究報告を紹介しました。しかしながら、同時にこのマウス実験で明らかとなったことはNF腫瘍を増殖抑制させるためにはNZ産プロポリスの1日投与量が100mg/kgでは効果がなく、300mg/kg必要であるとの実験データも紹介しました。60kgの人であれば1日に6g(100mgx60)では効果がなく18g(300mgx60)必要である計算になります。

それだけ高容量のNZ産プロポリスを摂取しなければならない理由は腫瘍細胞の増殖を抑える効果を持っているCAPEが胃酸に非常に不安定であり、分解しやすく、しかも、脂溶性物質なので消化管からの生体への吸収性も低く、その結果、生体利用能が極端に低いためだと考えられます。つまり、CAPEはごく僅かの量しか目的の腫瘍細胞に到達できないのが理由ではないか、と推察されます。

図1. γオリゴ糖を用いた安定化と可溶化による吸収性の向上
図1. γオリゴ糖を用いた安定化と可溶化による吸収性の向上

CAPEは胃酸によって加水分解を受けるだけではなく、抗酸化物質ですので酸化されやすく、さらには、他の食べ物と一緒に摂取するとタンパク質やアミノ酸と反応するなど、非常に不安定な物質です。そこで、γオリゴ糖で包接化することでCAPEの安定化に成功しています。(ここでは詳細は記載しませんが)

図2. 不安定なコーヒー酸フェネチルエステル(CAPE)の複数の反応サイト
図2. 不安定なコーヒー酸フェネチルエステル(CAPE)の複数の反応サイト

また、CAPEは脂溶性の高いフェネチル部位があるため脂溶性物質であることも生体への吸収性が低いもう一つの原因です。そこで、γオリゴ糖でCAPEを包接すると腸液中でCAPEの溶解度がアップすることを明らかとしました。実際には、腸液に含まれている胆汁酸であるタウロコール酸を1%添加した水溶液における溶解度を確認したところ、γオリゴ糖包接体(CAPE-γ-CD)で改善されていました。

図3. γオリゴ糖によるCAPEの溶解度の向上
図3. γオリゴ糖によるCAPEの溶解度の向上

このようにγオリゴ糖の包接技術を用いればCAPEの安定化と溶解度の向上は可能であることが分かりましたので、CAPEの生体利用能の向上は大いに期待できます。そこで、私たちの研究室は産業技術総合研究所との共同で、実際に、ニュージーランド産プロポリスに含まれるCAPEをγオリゴ糖で包接化することによってCAPEの生体利用能が高まり、その結果、抗がん活性が向上することを突き止めたのでした。そして、2016年にJournal of Cancerに投稿しました。

肺の腫瘍の増殖をみていますが、コントロールに比べて、CAPEに確かに増殖抑制効果はあるのですが、CAPEのγオリゴ糖包接体(CAPE-γ-CD)の方が明らかに抑制効果の高いことが分かります。

図4. γオリゴ糖によるCAPEの抗がん活性の向上
図4. γオリゴ糖によるCAPEの抗がん活性の向上