ブラジル産プロポリスに含有するアルテピリンCのγオリゴ糖による抗がん作用の向上|株式会社シクロケムバイオ
株式会社シクロケムバイオ
日本語|English
研究情報
今、注目していること
2020.2.26 掲載

ブラジル産プロポリスに含有するアルテピリンCのγオリゴ糖による抗がん作用の向上

今回は、日本において流通しているプロポリス製品の97%がブラジル産プロポリスとのことですので、日本プロポリス協議会の前会長で株式会社富士見養蜂園の角田社長が開発した超臨界抽出ブラジル産グリーンプロポリス(GPSE)のγオリゴ糖包接体の富士見養蜂園とシクロケムの共同研究に関する紹介です。この共同研究は角田社長がGPSEをγオリゴ糖と組み合わせることで、更なる健康増進効果の高い製品を作りたいという思いから実現し、その研究成果を2018年に論文発表できました。

ニュージーランド産プロポリスにはコーヒー酸フェネチルエステル(CAPE)という鍵となる機能性成分が含まれているようにブラジル産プロポリスには、ご存知のように、代表的な機能性成分として抗がん作用を有する桂皮酸誘導体のアルテピリンCが多く含まれています。プロポリスの抽出方法には、通常、エタノール抽出法が使われるのですが、角田社長は、アルテピリンCをはじめ、機能性成分の多くは脂溶性物質であることから、脂溶性物質をより高濃度で抽出できる超臨界法を採用し、GPSEを開発しました。日本プロポリス協議会の2005年のセミナーにおいて徳島文理大学の宮高教授が『プロポリスとがん』という演題で講演された際にブラジル産プロポリスのアルコール抽出と超臨界抽出におけるアルテピリンCの抽出量の差を薄層クロマトグラフィーで比較しています。アルコール抽出でアルテピリンCは殆ど抽出できておらず、一方、超臨界抽出でしっかりと抽出できることが示されています。

図1. 超臨界抽出とアルコール抽出のプロポリスエキスの薄層クロマトグラフィー
図1. 超臨界抽出とアルコール抽出のプロポリスエキスの薄層クロマトグラフィー

その宮高教授の講演の2年前の2003年の日本プロポリス協議会総会後のセミナーでは静岡県立大学の熊澤教授が『プロポリスの体内動態について』という演題で講演されているのですが、その中で、プロポリス中のアルテピリンCが小腸から生体内に吸収されにくい物質であることを指摘しています。その内容は以下のようです。

『ブラジル産プロポリスを経口投与したラットの糞を分析したところ、アルテピリンCを検出することができました。アルテピリンCを血中と尿からは検出できませんでした。このことからアルテピリンCは尿とか血中とかには、あまり回らなくて多くが糞便中に排泄されていることが考えられました。

最初に実験した昨年もそうではないか、と予想しましたが、やはり予想通りの結果でした。

では、アルテピリンCが体内に取り込まれなくてそのまま排泄されやすいことは、良いことなのでしょうか。

たとえば、ある研究者はアルテピリンCの大腸がんに対する有効性を調べています。また、癌細胞を使った研究も盛んに行われています。

今回の私たちの結果は、それらの研究と相関があるんじゃあないかと考えています。

要するにアルテピリンCが小腸から取り込まれにくいということは、大腸でこの化合物の存在時間が長くなるわけです。分解されなくて排泄されるということは、ブラジル産プロポリスが大腸や直腸がんなどに効果があるということと、因果関係があるのかも知れません。でも、私の専門は分析化学なものですからそのような専門外のことに憶測でものをいうのは責任が持てません。これ以上のことに関しては別の研究者にお任せしたいと思います。』

このようにブラジル産プロポリスに含まれるアルテピリンCは脂溶性のため、そのほとんどが小腸で吸収されず、排泄されてしまうようです。

図2. ブラジル産プロポリスを投与したラットの24時間後の糞のHPLC
図2. ブラジル産プロポリスを投与したラットの24時間後の糞のHPLC

GPSEは超臨界抽出法でアルテピリンC含有量を高めた抽出物ですが、角田社長はアルテピリンCの吸収性を向上させることでGPSEの効能を高めたいとの思いがありました。そこで、角田社長から私どもに、私の会社で開発した『脂溶性物質のγオリゴ糖による吸収性向上』技術をGPSEに利用したいとの申し出があり、富士見養蜂園と産業技術総合研究所(産総研)とシクロケムの共同研究による『超臨界抽出ブラジル産グリーンプロポリスのγオリゴ糖包接体の抗がん作用』に関する研究が行われたのでした。

まず、アルテピリンCは脂溶性であることから、小腸液中での溶解度が低いために生体への吸収性が低いと考えられますので、γオリゴ糖で包接化した場合に小腸液中の溶解度を高められるかどうかの検討を行いました。GPSEとGPSEのγオリゴ糖包接体(GPSE-CD)をそれぞれ人工腸液(食後)に加え37℃の温浴中で30分間振り混ぜ、フィルターろ過した後のHPLC分析したところ、アルテピリンCの溶解度はγオリゴ糖を用いることで約3倍に上昇することが分かり、GPSE-CDを摂取することで、アルテピリンCを効率よく吸収できることが期待できました。

図3. γオリゴ糖によるGPSE中のアルテピリンCの人工腸液(食後)における水溶性の変化
図3. γオリゴ糖によるGPSE中のアルテピリンCの人工腸液(食後)における水溶性の変化

そこで、皮下に腫瘍を移植したマウスを用いて、腫瘍増殖におけるGPSEとGPSE-CDの効果を調べてみました。コントロールに比べGPSEでも腫瘍増殖を抑えており抗がん活性は示されているのですが、GPSEのγオリゴ糖を包接化したGPSE-CDの場合は、抗がん活性はさらに大きく向上することが明かとなりました。γオリゴ糖によってアルテピリンCの吸収率が大幅に向上したためと考えられます。

図4. GPSEのγオリゴ糖包接化による抗がん活性の向上
図4. GPSEのγオリゴ糖包接化による抗がん活性の向上

前回、ニュージーランド産プロポリスに含まれるCAPEの神経線維腫の腫瘍増殖抑制作用について紹介しましたが、アルテピリンCにもCAPEと同様に抑制効果のあることが山田養蜂場と丸田先生のビトロ(生体外)試験の共同研究によって明らかにされています。よって、アルテピリンCが生体内に効率よく吸収出来るGPSE-CDを用いれば神経線維腫症の治療薬の開発も可能と考えられます。

図5. プロポリスエキスとアルテピリンCによる神経線維種細胞の増殖抑制
図5. プロポリスエキスとアルテピリンCによる神経線維種細胞の増殖抑制

さらに、私どもではGPSEのγオリゴ糖包接によってアルテピリンCの吸収率が向上したことを裏付けるため、抗がん活性とともに知られているアルテピリンCの効能である抗炎症作用もγオリゴ糖包接によって向上するかどうかについてドイツ・キール大学のリンバッハ教授と共同で検討し、その研究成果を2017年に論文発表しました。

マウスを用いた動物試験によって、TNF-αや血症アミロイドPなどの炎症マーカーが有意に下がり、明らかはGPSEのγオリゴ糖包接体(GPSE-CD)による抗炎症作用が示されたのでした。

図6. GPSEのγオリゴ糖包接化による抗炎症作用の向上
図6. GPSEのγオリゴ糖包接化による抗炎症作用の向上