αオリゴ糖によるGI値低減の理由|株式会社シクロケムバイオ
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2021.11.22 掲載

αオリゴ糖によるGI値低減の理由

マヌカハニーのGI値はαオリゴ糖を配合するとなぜ下がるのか?マヌカハニーのGI値は65です。マヌカハニー50%とαオリゴ糖50%のパウダーであるマヌカハニーαオリゴ糖パウダー(MAP)のGI値は僅か18になるとのニュージーランドのオタゴ大学の論文があります。

図1. マヌカハニーαオリゴパウダー(MAP)のGI値
図1. マヌカハニーαオリゴパウダー(MAP)のGI値

一般ハチミツのGI値が84に比べて、そもそもマヌカハニーのGI値は65であり、同じハチミツなのにGI値に差のある理由は一般ハチミツのGI値に影響を及ぼすブドウ糖と果糖の含有量がそれぞれ35%と40%に対して、マヌカハニーの場合にはそれぞれ31%と38%と低いためです。

それにしても、GI値が65と低いマヌカハニーであってもMAPに50%含まれているのであればMAPのGI値は単純に考えれば65 x 0.5 = 32.5となるはずです。それが、なぜ、大豆、きのこ、海藻、緑黄色野菜といった食品と同等の最も低いGI食品カテゴリーの18なのか?……大きな疑問でした。

GI値 食品
100 ブドウ糖(グルコース)
90-99 フランスパン
80-89 コーンフレーク、ハチミツ
70-79 フレンチフライ、ポップコーン、白米
60-69 砂糖(ショ糖)、サツマイモ、大麦パン、マヌカハニー
50-59 キウイ、バナナ、そば、うどん
40-49 ブドウ、桃、イチゴ、人参
30-39 リンゴ、西洋ナシ、ヨーグルト
20-29 グレープフルーツ、サクランボ、牛乳
10-19 大豆、きのこ、海藻、緑黄色野菜
図2. 各食品のグリセミック・インデックス(GI値)

その理由が2021年10月に発表の論文で明らかとなりました。

この話を多くの人に理解して頂くため、まず、GI値について分かりやすく説明しておきます。

GI値とはGlycemic Index(グリセミック・インデックス)値の略です。食後の血糖値の上昇度を示す指標、つまり、食品中の炭水化物の吸収されやすさを表す指標として使われている値です。摂取2時間までに血液中に入るグルコースの量を測ったものです。

GI値は(図2)に示すように食後の血中グルコースの変化において測定開始時のラインから上の曲線下面積の比に100を乗じたもので定義しています。ブドウ糖が基準食品でGI値は100です。血糖値の変化は個人差や日毎に変動があるために10名~12名の被験者に対して複数回測定することが国際基準として推奨されています。

図3. 食後血中グルコース(ブドウ糖)変化
図3. 食後血中グルコース(ブドウ糖)変化

2003年、WHOから『肥満、2型糖尿病の発症リスクを低GI食品が低減させる』という論文が発表されたことから、その後、多くの研究者が注目し、食品メーカーも食物繊維が多く、エネルギー密度の少ない、低GI食品の開発が進められるようになりました。

今や低GI食品は現代人に急増している肥満、糖尿病、メタボリックシンドロームの予防と改善の観点からも見直されるようになっています。

そのような中、GI値を低減できる食物繊維として難消化性デキストリン(難デキ)が注目されています。食品や飲料に難デキを5g加えると『糖の吸収を抑える』とか『脂肪の吸収を抑える』とか表示できることから機能性表示食品の開発には多くの食品メーカーが採用しています。

一般的に広く利用されている難デキと比較して、αオリゴ糖(αシクロデキストリン)はコレステロールや中性脂肪の脂肪吸収抑制においては一般の難デキが1食あたり5g摂取する必要のあるところをαオリゴ糖であれば2g摂取で効果が得られていますので、今ではαオリゴ糖のことは“スーパー難消化性デキストリン(スーパー難デキ)”と呼ばれていいます。そして、このαオリゴ糖による脂肪低減効果の作用機序は、シクロケムバイオの古根氏によって解明されています。

A study on the inhibitory mechanism for cholesterol absorption by α-cyclodextrin administration(α-シクロデキストリン摂取によるコレステロール吸収阻害機構の検討)
Takahiro Furune, Naoko Ikuta, Yoshiyuki Ishida, Hinako Okamoto, Daisuke Nakata, Keiji Terao and Norihiro Sakamoto
Beilstein J. Org. Chem. 2014, 10, 2827–2835

この論文を要約しますと、αオリゴ糖が消化液に含まれる乳化剤(脂肪を乳化して体内への吸収を促進する)であるレシチンを包接することでレシチンの乳化作用を抑制し、消化液中のコレステロールの溶解度を抑えることで吸収を阻害するというものです。

では、ここで、コレステロールや中性脂肪ではなくGI値についての話にもどります。なぜαオリゴ糖にマヌカハニーのGI値の低減効果があるのか、について、前述の2021年10月の論文です。

Lecithin Inclusion by α-Cyclodextrin Activates SREBP2 Signaling in the Gut and Ameliorates Postprandial Hyperglycemia(α-シクロデキストリンによるレシチン包接が腸のSREBP2シグナルを活性化し食後の高血糖を抑制する)
Eunyoung Lee, Xilin Zhang, Tomoe Noda, Junki Miyamoto, Ikuo Kimura, Tomoaki Tanaka, Kenichi Sakurai, Ryo Hatano and Takashi Miki
Int. J. Mol. Sci. 2021, 22, 10796

デンプンを含む食事をした時に一般の難デキに血糖値の上昇抑制効果のあることは知られています。そこで、この論文では、まず、ブドウ糖を摂取した際に一般の難デキに血糖値の上昇を抑制する効果の無いことを確かめています。その上で、αオリゴ糖にはデンプンや砂糖を摂取した時だけではなくブドウ糖を摂取した際の血糖値の上昇抑制効果のあることを明らかとしています。

図4. ブドウ糖摂取後のαオリゴ糖による血糖値上昇抑制効果
図4. ブドウ糖摂取後のαオリゴ糖による血糖値上昇抑制効果

そこで、αオリゴ糖のブドウ糖摂取時の血糖値の上昇抑制効果のメカニズムを解明するための様々な調査を行う中でレシチン-αオリゴ糖包接体が形成していることを確認しており、この包接体形成が関与しているのではないかと推察しています。尚、この包接体形成については、前述のシクロケムバイオの古根氏の2014年の論文を引用しています。

マウスに20%ブドウ糖水溶液とαオリゴ糖を同時に経口摂取させると30分後に腸管内に白い堆積物がみられました。(図5 A)そこで、試験管での検討を行っています。αオリゴ糖水溶液10%(w/v)とレシチン懸濁液26mg/mlを1:1体積比で混和したところ、沈殿物が生じています。(図5 B)尚、この実験は古根氏の実験と全く同じです。

図5. レシチン-αオリゴ糖包接体形成の確認
図5. レシチン-αオリゴ糖包接体形成の確認

レシチンのαオリゴ糖包接体が血糖値上昇抑制メカニズムに関連している可能性があるため、あらかじめαオリゴ糖にレシチンを包接させたものを投与し、血糖値変動を検討したところ、αオリゴ糖でみられた血糖値上昇抑制効果は、レシチン包接体では見られなかったのです。腸管内でのレシチンの包接がαオリゴ糖による血糖上昇抑制効果に関連すると考えられました。

図6. レシチンのαオリゴ糖包接体化による血糖値上昇抑制
図6. レシチンのαオリゴ糖包接体化による血糖値上昇抑制

αオリゴ糖がレシチンを包接してレシチンの乳化作用を抑制するとコレステロールの消化液中での溶解度は下がり、コレステロールの吸収が抑えられることは前述の古根氏の論文で明らかとなっています。

ここで、メカニズムの推定です。コレステロールの吸収が抑制され、コレステロールが足りなくなったと判断された十二指腸のI細胞において転写因子のSREBP2タンパクが活性化すると、コレシストキニンが分泌されると考えられます。コレシストキニンは肝臓における糖新生を低下させることが知られています(Cell Metab. 2009)。その結果、血糖値の上昇は抑えられたと考えられます。

そこで、推定メカニズムの検証として、マウスにαオリゴ糖を強制経口投与し、30分後に組織を回収し、SREBP2遺伝子発現を検討したところ、十二指腸及び空腸において1g/kgのαオリゴ糖の投与はSREBP2遺伝子発現を増加させることを確認しています。

つまり、ブドウ糖を摂取した際のαオリゴ糖の血糖値上昇抑制のメカニズムは…

  1. αオリゴ糖によるレシチンの包接
  2. コレステロールの吸収阻害
  3. I細胞でのSREBP2活性化
  4. コレシストキニンの分泌
  5. 肝臓での糖新生の抑制
  6. 血糖値の低下

であることがこの論文で明らかとなっています。これがαオリゴ糖によるマヌカハニーのGI値低減の理由だったのです。