リゾチームとαオリゴ糖による相乗的な抗菌作用によるコロナ感染対策とは|株式会社シクロケムバイオ
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2022.1.25 掲載

リゾチームとαオリゴ糖による相乗的な抗菌作用によるコロナ感染対策とは

αオリゴ糖とリゾチームの組合せによる相乗的な細菌の増殖抑制作用が2004年に東亜化成工業によって確認され特許出願されています。(ただし、この特許出願は審査未請求で終わっています。)そして、この検討の目的は、保存剤として知られているソルビン酸や安息香酸などのように腸内環境に影響を与えることなく、酢酸やグリシン、エタノールのような味質を変えない食品の日持ち向上剤の開発です。

この検討に用いた細菌は枯草菌(バチルス・サブチルス)、黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカスアウレウス)、セレウス菌(バチルス・セレウス)、そして、一般生菌です。

まず、食品の腐敗菌である枯草菌の増殖抑制作用です。枯草菌に関してαオリゴ糖に増殖抑制作用は認められませんが、リゾチームには増殖抑制作用が認められ、αオリゴ糖とリゾチームを組み合わせて用いると完全に増殖を抑制できることが確かめられています。

図1. 食品の腐敗菌である枯草菌の増殖抑制
図1. 食品の腐敗菌である枯草菌の増殖抑制

次に、食中毒の原因菌であるセレウス菌の増殖抑制作用です。興味深いことに、セレウス菌に関しては、まったく逆にリゾチームに増殖抑制作用は殆ど認められないのですが、αオリゴ糖には増殖抑制作用が認められています。そして、セレウス菌に対しても、αオリゴ糖とリゾチームを組み合わせて用いると完全に増殖を抑制できることが確認されています。

図2. 食中毒の原因菌であるセレウス菌の増殖抑制
図2. 食中毒の原因菌であるセレウス菌の増殖抑制

そこで、日持ち向上剤として有効かどうかを調べるために、実際にカスタードクリーム中にαオリゴ糖とリゾチームを単独で、そして、組み合わせて用いた際の一般生菌数の変化を検討しています。その結果、αオリゴ糖とリゾチームを単独で用いた際と比較して組み合わせて用いた方が明らかに高い一般生菌の増殖抑制効果のあることが確かめられています。

図3. カスタードクリーム中の一般生菌の増殖抑制
図3. カスタードクリーム中の一般生菌の増殖抑制

さらに、肺炎、髄膜炎、敗血症等、致死的感染症の起因菌である黄色ブドウ球菌に対するαオリゴ糖とリゾチームの単独と組み合わせによる豆乳中での増殖抑制効果も検討し、上述の検討結果と同様に、αオリゴ糖とリゾチームを組み合わせて用いることで高い黄色ブドウ球菌の抑制作用のあることが判明しています。

図4. 豆乳中の黄色ブドウ球菌の増殖抑制
図4. 豆乳中の黄色ブドウ球菌の増殖抑制

以上のように、リゾチームとαオリゴ糖を組み合わせは、味覚を変えず、安全で効果の高い食品日持ち向上剤となりうることが分かっています。この高い増殖抑制作用は、αオリゴ糖とリゾチームが持つ抗菌作用はメカニズムが異なっており、リゾチームの抗菌活性は細菌の細胞壁を構成する多糖類を加水分解する酵素の作用を利用したものであり、αオリゴ糖は細胞壁のリン脂質を包接で引き抜き穴を空ける作用を利用したものです。よって、それぞれの相乗的に働いたために得られたものと考えられます。

また、リゾチームには抗菌作用だけではなく抗ウイルス作用もあることが知られております。最近では、新型コロナウイルスに対する感染対策に有効であることが明らかとなっています。工業的には卵白のリゾチームが食品や医薬品の分野で利用されていますが、リゾチームはヒトの涙や鼻汁、母乳にも含まれ、唾液中にも含まれています。そこで、オミクロン株のようなマスクでは防ぎきれない感染力の強いコロナウイルスに対する感染予防の対策案です。

電車での移動時、多数の人と接触機会の多い時にはαオリゴ糖を配合した飴やチューインガムで口内にαオリゴ糖を維持するように努めましょう。唾液中のリゾチームとのタッグでオミクロン株に対する強い感染予防効果が期待できると考えられます。