クロセチンのγオリゴ糖包接体による良質な眠りとピント調節とシミくすみ改善|株式会社シクロケムバイオ
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研究情報
今、注目していること

クロセチンのγオリゴ糖包接体による良質な眠りとピント調節とシミくすみ改善

クロセチンはカロテノイドの一種でクチナシの果実やサフランに含まれる天然の黄色色素です。抗酸化作用が知られており、生薬にも配合されるなど、古くから人々の健康のために利用されてきました。

慶應義塾大学と大阪大学、ロート製薬の研究グループは6~12歳の弱度~中度の近視の男女69人を対象に試験を行い、クロセチン7.5mg含むソフトカプセルを1日1回24週間服用してもらい、クロセチンが近視の進行を顕著に抑えることを確認しました。

また、クロセチンには睡眠の質を高める効果のあることも人試験によって実証されています。不眠症気味の健常人男女24人(平均年齢50.8歳)を対象に、クロセチン7.5mg含むソフトカプセルを1日1回2週間服用してもらい、OSA-MA睡眠調査票(眠気・疲労回復の評価)を行ったところ、起床時の眠気・疲労回復のスコアが顕著に高くなることが確認されています。

このようにヒト試験によってクロセチンを1日に7.5mg服用すると良質な眠りと目のピント調節に効果のあることが示されており、幾つもの機能性表示食品が販売されています。

図1. クロセチンの効能効果
図1. クロセチンの効能効果

クロセチンは良質な眠りと目のピント調節以外にも、肌のシミやくすみの改善やアルツハイマー型認知症の治療目的に検討されています。

Delivering Crocetin across the Blood-Brain Barrier by Using γ-Cyclodextrin to Treat Alzheimer’s Disease (アルツハイマー病治療のためのγCDを用いた血液脳関門通過によるクロセチンの送達)K. H. Wong et al., Scientific Reports nature research 10, 3654 (2020)

この論文ではアルツハイマー病という神経変性疾患の治療に対して、血液脳関門(BBB)を通過する必要があり、その目的で機能性成分として神経変性疾患の治療効果のあるクロセチンを選択し、γオリゴ糖で包接させて可溶化し、吸収性を高めた医薬製剤の開発にていて研究を報告しています。しかし、この『今、注目していること』では、その全体の詳細を説明するのではなく、論文の中でも今後の機能性表示食品を開発する際の有用な知見として、クロセチンγオリゴ糖包接体と未包接体の腹腔内投与後の生体吸収性を比較した結果のみを以下に紹介しておきます。

ラットへのクロセチン-γ-オリゴ糖包接体およびクロセチンの生理食塩水懸濁液の腹腔内投与の比較を(図2)と表に示しています。尚、この論文ではクロセチン-γ-オリゴ糖包接体の静脈注射による投与も比較していますが、食品分野でのクロセチンの利用を目的としていますので、ここでは、省略させていただきました。包接体と未包接体のTmax(最高血中濃度到達時間)は共に0.5時間で同じでしたが、吸収性評価の指標となるCmax(最高血中濃度)とAUC0-∞(血中濃度-時間曲線下面積)には大きな違いがありました。クロセチン包接体投与のCmaxは10.528±2.358μg/mLであり、未包接クロセチン投与のCmaxは0.272±0.052μg/mLなので、γ-オリゴ糖で包接化することで約39倍も向上しています。また、AUCの比較では、包接体が11.767±2.138μg・h-1・mL-1に対し、未包接体は0.963±0.278μg・h-1・mL-1となり、クロセチンはγ-オリゴ糖の包接化することで吸収性(バイオアベイラビリティ)は約12倍向上することが明らかとなっています。

図2. 腹腔内投与後の血漿中クロセチン濃度変化
図2. 腹腔内投与後の血漿中クロセチン濃度変化

表. クロセチンの薬物動態パラメーター

薬物動態パラメーター クロセチン-γ-オリゴ糖 クロセチン生理食塩水
T1/2 (h) 0.679±0.162** 2.730±0.752
Tmax (h) 0.292±0.228 0.500±0.000
Cmax (μg/mL) 10.460±1.172** 0.240±0.144
AUC0-t (μg・h-1・mL-1) 12.169±1.387** 0.801±0.434
AUC0-∞ (μg・h-1・mL-1) 12.211±1.378** 0.935±0.441

現在、眼精疲労の機能性表示と睡眠の質の向上の機能性表示したクロセチンを配合した機能性表示食品が販売されていて、何れの場合も、1日のクロセチン摂取量は7.5mgであり、クロセチン未包接体のソフトカプセルです。したがって、クロセチン-γ-オリゴ糖包接体を用いることで、さらに高い効能効果を持つサプリメント開発に期待が寄せられています。