• HOME
  • 最新研究成果
  • 今、シクロケムが注目していること
  • 自社論文
  • CDの応用分野
  • 世界のCD食品規制
  • CDのホスト・ゲスト対応表
  • 会社概要
  • お問い合わせ
今、シクロケムが注目していること
R-αリポ酸の効能とS-αリポ酸の毒性に関する論文の要約と考察

その13

R-αリポ酸の効能について紹介しています。今回は、R-αリポ酸の生体内抗酸化物質ネットワークにおける役割について示す論文を紹介します。

αリポ酸は生体内抗酸化物質ネットワークの中で重要な役割を果たす抗酸化物質の一つであり、NADHによって還元体となります。

図1. 生体内抗酸化物質ネットワーク

ところが、一般にサプリメントにはαリポ酸は天然型のR体と非天然型のS体が50%ずつのラセミ体が使用されていますが、図2に示しますαリポ酸の還元経路によって還元体になるのはそのほとんどがR体であることが、ここで取り上げる学術論文によって明らかとなっています。

図2. αリポ酸の細胞内における還元経路

この論文タイトルはCYTOSOLIC AND MITOCONDIAL SYSTEMS FOR NADH- AND NADPH-DEPENDENT REDUCTION OF α-LIPOIC ACID(αリポ酸のNADHとNADPHに依存的な還元に対する細胞質およびミトコンドリアシステム)であり、Free Radical Biology & Medicine Vol. 22, No. 3, pp 535-542 (1997) に報告された論文です。

この論文を理解するために、まず、NADHについて説明しておきます。

NADH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、nicotinamide adenine dinucleotide)とは、全ての真核生物と多くの古細菌、真正細菌で用いられる電子伝達体であります。さまざまな脱水素酵素の補酵素として機能し、酸化型(NAD+)および還元型(NADH)の2つの状態を取り得えます。

NAD+は生物のおもな酸化還元反応の多くにおいて必須成分(補酵素)であり、好気呼吸(酸化的リン酸化)の中心的な役割を担っています。解糖系およびクエン酸回路より糖あるいは脂肪酸の酸化によって還元物質NADHが得られます。

この論文では細胞の細胞質内とミトコンドリア内の酸化還元反応やNADHとNADPHに依存的な酸化還元について検討していますが、図2に示していますように、αリポ酸の還元の主要経路はミトコンドリアにおけるR-αリポ酸の還元ですので、シンプルに分かりやすくするため、ミトコンドリア内のNADHによる還元についてのみ、抜粋して紹介することとします。

結論から述べますと、ミトコンドリアにおいてR-αリポ酸はジヒドロリポアミドデヒドロゲナーゼの高い酵素活性を示し、その還元速度はR体の方がS体より6~8倍はるかに速いことが判りました。

ラットの心臓のミトコンドリアマトリックスを用いた実験で、基質としてαリポ酸のラセミ体、R体、S体(10mM)を用い、100μMのNADHを反応の補基質として使用しました。さらに、グルタチオンは酸化型ジスルフィドの500mMのGSSG(グルタチオンジスルフィド;酸化型)を基質として用いました。その結果、R体の還元はS体よりも顕著に速いことが確認されています。

図3. ミトコンドリアマトリックス画分によるαリポ酸の還元

次に、単離されたラットの心臓を、Langendorff法を用いて2mMのR-αリポ酸、またはS-αリポ酸を含有する重炭酸緩衝液で灌流し、冠動脈流出液中のジヒドロリポ酸濃度を測定しています。

その結果、R-αリポ酸を含有する灌流液の場合、ジヒドロリポ酸が冠状流出液に現れ、80-130 nmol/mg/minのレベルで維持されることがわかりました。一方で、S-αリポ酸を灌流に使用した場合には、ジヒドロリポ酸の最大濃度はR-αリポ酸塩よりも6〜8倍低いことがわかりました。心臓ではミトコンドリア含量が高く、NADH依存的に還元されるため、S-αリポ酸ではなく、R-αリポ酸が有効であることが確認されました。

図4. ラット心臓によるαリポ酸の還元

生体内では抗酸化物質のネットワークは活性酸素から身を守るために大変重要なのですが、中でも、αリポ酸はグルタチオン、コエンザイムQ10、ビタミンC、ビタミンEなどさまざまな生体内で必要な抗酸化物質の再利用を可能とする物質として働きます。この論文の紹介によって、その役割を果たしているのは、S-αリポ酸ではなく、R-αリポ酸であることがご理解いただけたと思います。

その14

R-αリポ酸の効能について紹介しています。今回は、R-αリポ酸による糖代謝の要の反応に関与しているピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体(PDC)の活性化作用について二つの論文を紹介します。

では、論文紹介の前にまずPDCとR-αリポ酸の関係について説明をしておきます。

細胞内に取り込まれたグルコースは先ず解糖系でピルビン酸に変換されます。ピルビン酸はPDCの働きによってアセチルCoAに誘導されたのち、TCAサイクル、電子伝達系により酸化されてエネルギーが生産されています。このPDCの働きを支える必須の物質がR-αリポ酸であり、糖代謝のために必要不可欠なのです。血糖が高値を維持し続けると体内の様々な場所でタンパクなどに結合し不可逆的に最終糖化生成物(AGEs)を発生させ、これが糖尿病合併症や老化の原因になっています。糖を効率よくエネルギーへ変換する働きを持つR-αリポ酸は、抗糖化素材として現在非常に注目されている物質なのです。

図1. グルコースからのエネルギー産生に関わるR-αリポ酸とPDC

尚、現在市販されている一般的なαリポ酸サプリメントの多くはR-αリポ酸ではなく、R-αリポ酸と非天然体であるS-αリポ酸の50%ずつのラセミ体という成分が含まれています。ところが、図1にも示しますように、S-αリポ酸はPDCの働きを阻害することからR-αリポ酸のPDC活性化作用を打ち消します。そこで、αリポ酸のサプリメントを購入するときはR-αリポ酸のみが処方されているかどうかを確認しましょう。

今回取り上げる論文の一つ目はラットの肝細胞を用いてピルビン酸の代謝と脂肪酸酸化に対するR-αリポ酸の影響を観たものです。(Effect of R(+)α-Lipoic acid on Pyruvate Metabolism and Fatty Acid Oxidation in Rat Hepatocytes, Jennie L. Walgrenら、Metabolism, 53(2)165-173 (2004))

24時間絶食したラットの肝細胞を単離し、R-αリポ酸を0から200μmol/Lの濃度で添加しています。3時間後、酵素をKFで不活性化してC14ラベル化した二酸化炭素の発生量をPDC活性のパーセンテージで表現しています。その結果、PDC活性はR-αリポ酸の濃度依存的に上昇しました。(n=4-5 /それぞれの処理群、P<0.05)

図2. ラット肝細胞のPDC活性に対するR-αリポ酸の影響

次に取り上げる論文はS-αリポ酸ではなくR-αリポ酸が血管性認知症患者のPDC活性を向上するという論文です。(R-, but not S-alpha lipoic acid stimulates deficient brain pyruvate dehydrogenase complex in vascular dementia, but not in Alzheimer dementia, L. Froelich et al, J. Neural Transm 111, 295-310 (2004))

血管性認知症とアルツハイマー型認知症の認知症患者のPDC活性は健常人(正常な脳の人)に比べて低下していることが知られています。そこで、認知症を発症した人から剖検で脳組織をサンプリングし、脳組織にR-αリポ酸とS-αリポ酸を添加し、PDC活性を評価しています。

まず、健常人(正常脳)のR-αリポ酸は健常人のPDC活性を向上させることがわかりました。(P<0.05)その一方で、S-αリポ酸はPDC活性を抑制する傾向にあることも確認されています。

図3. 健常人(正常脳)のPDC活性に対するR-αリポ酸の影響

アルツハイマー型認知症患者の場合はR-αリポ酸によっても、残念ながら、有意にPDC活性を向上させることは出来ていません。

図4. アルツハイマー型認知症患者のPDC活性に対するR-αリポ酸の影響

次に、脳血管性認知症患者の場合はR-αリポ酸の処置でPDC 活性は向上することがわかりました。(P<0.05)

図5. 脳血管性認知症患者のPDC活性に対するR-αリポ酸の影響

尚、健常人(正常脳)、アルツハイマー型認知症患者、血管性認知症患者のすべての検討において、S-αリポ酸はPDC活性を阻害するか、影響を与えないという結果となっています。繰り返しになりますが、くれぐれも、αリポ酸サプリメントを購入する際はR-αリポ酸の表示のあるものを選びましょう。

相談コーナー

ご質問やご相談がございましたら、以下のジャンルからお問い合わせをお願いいたします。

  • CD、CD包接体はこちら
  • 受託製造についてはこちら
  • 出張セミナーについてはこちら