タンパク質を分解するタンパク質分解酵素プロテアーゼもタンパク質|株式会社シクロケムバイオ
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タンパク質を分解するタンパク質分解酵素プロテアーゼもタンパク質

脂肪分解は、リパーゼというタンパク質、炭水化物分解はアミラーゼというタンパク質、そして、タンパク質の分解もプロテアーゼというタンパク質です。今回は、タンパク質を分解する酵素であるプロテアーゼは、自身がタンパク質なのになぜ分解されないのか、の疑問に(分かりやすく)迫ります。

タンパク質は、20種類のアミノ酸が結合してできています。私たちは、毎日食事からタンパク質を取り入れていますが、タンパク質は大きな分子ですので、そのままでは吸収されません。また、人間ではない動物や植物のタンパク質は、人間のものと構造も役割も違いますので、取り入れてもそのままでは使えません。取り入れたタンパク質は、いったんアミノ酸まで分解され、再びつなぎ合わせて体に必要なタンパク質を作り出す必要があるのです。

また、生体内で作られたタンパク質もその役目が果たされると分解されて体外に排出されるものも多々あります。骨の形成のために必要なタンパク質はコラーゲンですが、成長のためには分解され新しいコラーゲンが作られています。また、血糖低下作用を持つタンパク質としてインスリンがありますが、過剰に存在すると低血糖になりますので適度に分解されていく必要があります。このように、私たちの体を形成しているタンパク質は分解と合成が繰り返されています。

タンパク質を分解する酵素であるプロテアーゼは体の中で作られていて、消化液に含まれています。胃液の中には『ペプシン』というプロテアーゼが含まれていて、食べ物中のタンパク質を細かく分解しています。このことをペプチド化といいます。胃酸は強酸性ですので、食べ物中のタンパク質の(水素結合による)折りたたみをゆるめます。そのゆるんだところからプロテアーゼの攻撃を受けて分解していきます。一方で、ペプシンもタンパク質ですが、ペプシンは『β-シート』(ちょっと耳慣れない言葉ですが、安定で頑丈なシートと考えてください。)という構造をたくさん持っていて酸によってゆるまない構造になっているので、自らは分解されないのです。

胃で部分的に分解されたペプチドは腸に運ばれ、腸内の腸液に含まれるプロテアーゼでさらに短く分解されていきます。この腸のプロテアーゼは、膵臓で合成されるものでトリプシンやキモトリプシンと呼ばれています。

プロテアーゼは、人間など高等生物に特有なものではなく、多くの細菌もプロテアーゼを利用しています。細菌は食べ物よりも自分の方が小さいので、プロテアーゼを体外に分泌して肉などのタンパク質を分解し栄養源としています。「肉や卵の腐敗」は細菌の酵素によってタンパク質や脂肪が分解される現象です。この“腐敗”という言葉は、人間が勝手に自分たちに役にたたないものに対して使っています。一方で、役にたつ場合には“発酵”という言葉を使っています。納豆菌もプロテアーゼを利用して大豆タンパクを一部、アミノ酸に分解し、特有の味を作り出していますし、チーズも同様です。これらのプロテアーゼの作用は“発酵”です。

細菌だけでなく、植物であるキウイフルーツやパイナップル、パパイアもプロテアーゼを含んでいます。酢豚に使われているパイナップルは、豚肉を軟らかくし、パパイアはコンタクトレンズに付着したタンパクの汚れを分解する洗浄液に利用され、キウイフルーツに含まれるアクチニジンというプロテアーゼは、口の中の舌苔というタンパク質による汚れを分解してきれいにする目的で利用されています。また、生活環境のストレスなどで、タンパク分解酵素が上手く作られていないとタンパク質の消化ができないため、体に有効に取り入れることができず、胃もたれなどの症状も出てきますが、そのような場合にはこれらのフルーツを食べることをオススメします。

ところで、キウイフルーツは、果物の中で100gあたりのビタミンCの量が1番豊富です。キウイフルーツ1 個で1日の必要量のほとんどが補えるところも魅力です。

なお、シクロデキストリンによってこのような果物に含まれるプロテアーゼの活性を失活させることなく、安定な粉末にして保つことができることが分かっています。

第43回 α-シクロデキストリンによる果汁プロテアーゼの失活防止効果