シトルリンを含むスイカの効能(1)スポーツパフォーマンス向上|株式会社シクロケムバイオ
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研究情報
今、注目していること

シトルリンを含むスイカの効能(1)スポーツパフォーマンス向上

TBSの朝の番組『健康カプセル!ゲンキの時間』(2020年6月14日)では、このコロナ禍の外出自粛によって体臭の問題が浮上していると、体臭について取り上げていました。おしっこのようなアンモニア臭が全身から漂うようになっているとのことでした。

その理由は二つ挙げられていて、その一つは、家庭で運動量が減っているにもかかわらず肉類中心の食生活で、タンパク質が肝臓でうまく代謝できず、アンモニアが発生していると説明していました。

しかし、これは間違いで、タンパク質は消化酵素でアミノ酸かジペプチドやトリペプチドのような低分子にならないと消化管から体内には入りません。よって、肝臓ではアミノ酸からアンモニアが発生するということと、分解されなかったタンパク質は大腸で悪玉菌によって分解されて大量のアンモニアが発生し、体内にアンモニアが入るのがアンモニア臭の原因だと考えられます。

もう一つの理由として挙げていたのが、外出自粛によるストレスでした。ストレスを感じると交感神経が優位になり、その時間が続くとアンモニア臭も比例して高くなるそうです。これはストレスによって肝機能が低下してしまうのが原因で、その対処方法が番組では説明されていました。

でも、これらの二つの理由は何れも肝機能が関係しています。よって、ご存知のように、飲み過ぎて二日酔いにならないようにシジミエキスを配合したサプリメントが世の中に出ていますが、その機能性成分はオルニチンです。オルニチン回路は尿素回路とも呼ばれ、肝臓でアンモニアを尿素に変換して腎臓に送り尿として排出すれば、アンモニア臭はなくなるというものです。

オルニチンは肝臓内でシトルリンに変換されます。さらに、シトルリンはアルギニンに変換されて、血管拡張作用や動脈硬化抑制作用を有する一酸化窒素を合成しているのです。

図1. オルニチン回路によるアンモニアの解毒と一酸化窒素合成
図1. オルニチン回路によるアンモニアの解毒と一酸化窒素合成

このようにシトルリンとアルギニンはどちらを摂取しても一酸化窒素合成やアンモニアの解毒を行え、同じ効果と考えられるのですが、サプリメントとして摂取する場合は、最近の研究から代謝の影響を受け難く血管細胞まで到達できるシトルリンの方が有効であるとの見方が強くなってきています。

そこで、ここでやっと本日の主題のスイカの話となります。

スイカに関してはαオリゴ糖を用いるフレッシュパウダーの原料候補として以下で取り上げています。
難消化性αオリゴ糖を用いるフレッシュパウダーの候補(1)スイカ

スイカの栄養成分としてはリコピン、βカロテン、ビタミンC、カリウム、シトルリン、そして、糖質分解酵素のマンノシダーゼが知られていて、その中でも、リコピンとシトルリンが注目されていますが、難消化性αオリゴ糖を用いるフレッシュパウダーの候補として挙げた際にはリコピンについて説明しています。そこで、今回はシトルリンの効能について解説します。

シトルリンはそもそもスイカから発見された物質で、スイカ100g中に180mgと他のウリ科の植物のメロン(50mg/100g)やキュウリ(10mg/100g)などに比べ、圧倒的に多く含まれています。

シトルリンはスポーツパフォーマンスの向上、アテローム性動脈硬化の軽減、抗炎症、そして、肌の潤いを保つ天然保湿因子(NMF)などさまざまな効果が報告されていますが、ここでは、まず、スポーツパフォーマンスの向上に関する研究報告を紹介します。

Supplementation of 100% Flesh Watermelon Juice Improves Swimming Performance in Rats
(100%果肉スイカジュースの補給は、ラットの水泳能力を向上する)
R. Ridwan et al., Prev. Nutr. Food Sci. 2019;24(1):41-48

シトルリン(0.26g/kg)、アルギニン(0.4g/kg)、オルニチン(0.2g/kg)を含有した餌をマウスへ与えると、運動後の血中アンモニアの蓄積が低下し、遊泳の体力消耗時間が延長することが確認されています。これらの発見は、シトルリンがアンモニアを除去し、持久力を改善して、回復促進する機能があることを示しています。

最近の研究では、シトルリンがアルギニンの経口摂取よりもアルギニン濃度を効果的に増加すると示しています。また、アルギニンの摂取は、胃腸不快感・吐き気・下痢を引き起こし、毎日の摂取には不向きであり、消化管での一酸化窒素生成が急増して、不快感をもたらすと考えられています。
そこで、この研究では、シトルリンを含有する100%果肉スイカジュースと100%果皮スイカジュースの14日間の摂取がラットの遊泳能力に及ぼす影響について、体力消耗までの遊泳時間、アンモニアや一酸化窒素濃度などの持久力パラメーターを測定しています。

赤い種なしスイカの赤肉と白皮からジュースを作り、健康的な6週齢の雄のラットに与えて検討しています。

4群に分けて1日2回14日間自由摂取後に以下のような遊泳運動をさせています。

室温に維持した水深30cmのタンク(42 x 64 x 38cm)に1日目と2日目に朝と夕に各10分間ずつ、3日目には、朝と夕に疲労するまで1日2回3日間遊泳させています。尚、水面に顔を上げて15秒以内に吸入不可能となった際に疲労に達したと見なしています。

先ず、遊泳時間の比較です。驚くことに、100%果肉スイカジュース(FR)群はポジティブコントロール(C)群よりも顕著に遊泳時間は延長することが明かとなっています。

図2. スイカジュースによる限界遊泳時間の延長
図2. スイカジュースによる限界遊泳時間の延長

次に、代謝老廃物としてスポーツパフォーマンスを下げる要因の血漿中のアンモニアの濃度変化を調べたところ、やはり、100%果肉スイカジュース(FR)群がポジティブコントロール(C)群のみならず、100%果皮スイカジュース(RR)群と比較しても顕著にアンモニア濃度を下げることが判りました。

図3. スイカジュースによる血漿中アンモニア濃度の減少
図3. スイカジュースによる血漿中アンモニア濃度の減少

また、一酸化窒素(NO)は血管拡張作用をもたらしスポーツパフォーマンスを向上させることが知られているが、NO産生においても、100%果肉スイカジュース(FR)群はポジティブコントロール(C)群やネガティブコントロール(N)群と比較して顕著にNO産生作用のあることが判明しています。

図4. スイカジュースによる一酸化窒素産生
図4. スイカジュースによる一酸化窒素産生

これらの結果から、シトルリンにアンモニア除去作用とNO産生作用のあることは明らかですが、スイカの果肉にはシトルリンのみならず、他の機能性成分との相乗作用によってそれらの機能がさらに高められているようです。

尚、NO産生に関しては、シトルリンとともにR-αリポ酸も重要な栄養素です。そのR-αリポ酸の効能に関しては、以下で取り上げています。
R-αリポ酸の効能とS-αリポ酸の毒性に関する論文の要約と考察(11)