スーパー食物繊維による血糖値上昇抑制の3つめの推定メカニズム|株式会社シクロケムバイオ
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研究情報
今、注目していること
2021.12.15 掲載

スーパー食物繊維による血糖値上昇抑制の3つめの推定メカニズム

スーパー食物繊維と呼ばれているαオリゴ糖は『食後の血糖値を抑えることが報告されています。』と機能性表示できる食品の機能関与成分として知られています。αオリゴ糖がさまざまな食物繊維の中で“スーパー食物繊維”と呼ばれる理由の一つは他の食物繊維はご飯やパンなどに含まれるデンプンを食した時に血糖値上昇を抑えることができても、砂糖を摂取した時には血糖値上昇は抑えられないところが欠点ですが、αオリゴ糖の場合はデンプンと砂糖のどちらに対しても血糖値上昇の抑制効果が観られ、これがスーパー食物繊維としてのαオリゴ糖の一つの利点となっています。

そこで、αオリゴ糖の血糖値上昇抑制効果の1つめの推定メカニズムとしては、他の食物繊維にはαアミラーゼというデンプン分解酵素の酵素活性阻害作用はあるもののスクラーゼという砂糖分解酵素の酵素活性阻害作用はないのですが、αオリゴ糖には酵素活性部位を包接することでどちらの酵素に対しても活性阻害作用を持つと考えられています。

2つめの推定メカニズムは、この「今、注目していること」でも紹介した『αオリゴ糖によるGI値低減の理由』です。上記のようにデンプンや砂糖が含まれる食品を食した際の血糖値上昇抑制については酵素阻害で説明できるのですが、αオリゴ糖には、糖の最小単位である単糖のブドウ糖を含むマヌカハニーのGI値低減作用もあるのですが、その理由は長年良く分かっていませんでした。しかしながら、2021年10月に発表された論文でそのメカニズムが解明されています。『肝臓での糖新生抑制』でした。

αオリゴ糖によるGI値低減の理由

健康産業流通新聞 令和3年12月9日『αシクロデキストリン 血糖値低減機能の機序確認 酸化コレステロール低減機能も』

さらには、3つめの推定メカニズムがあります。それは、血中GLP-1活性の増加です。このメカニズムを説明する前にGLP-1について簡単に説明しておきます。

食事をする際に摂取する食事中の水溶性食物繊維などの成分によっては小腸の細胞の一部が刺激されインクレチンという消化管ホルモンが分泌されます。インクレチンにはGLP-1とGIPがあり、それぞれの働きで膵臓のβ細胞に作用することが知られています。たとえば、最近開発されたインクレチン製剤がありますが、それはGLP-1の体内での作用メカニズムに着目して開発された糖尿病治療薬です。

小腸内でGLP-1が食事によって分泌されるとβ細胞内にあるGLP-1受容体に結合しcAMPを上昇させインスリン分泌を促進させ、反対に、グルカゴンの分泌を抑制して血糖値の上昇を抑えます。グルカゴンもインスリンと同様に膵臓で作られるホルモンです。インスリンに血糖値を下げる働きのあることは良く知られていますが、グルカゴンは血糖値を上げるという働きを持っていまして、双方で血中グルコースレベルを維持しています。

千葉大のLeeらの研究グループはスーパー食物繊維のαオリゴ糖がGLP-1の分泌を促進することを見出し、2021年10月にInternational Journal of Molecular Scienceに報告しています。

実験方法は、マウスに、αオリゴ糖を強制経口投与し、30分後の血中GLP-1活性を測定しています。その結果、摂取量依存的にGLP-1の活性が上昇することを確認されています。

図1. αオリゴ糖によるGLP-1活性の向上
図1. αオリゴ糖によるGLP-1活性の向上

つまり、αオリゴ糖の血糖値上昇抑制作用の機序は、①小腸でのデンプン分解酵素と砂糖分解酵素の阻害、②肝臓での糖新生の抑制、そして、③膵臓で作られるインスリンの分泌促進とグルカゴンの分泌抑制の3つのメカニズムによるものと考えられます。

尚、(図2)にはGLP-1の膵臓への作用のみならず、さまざまな臓器におけるさまざまな作用を示しております。このようにαオリゴ糖によるGLP-1の分泌促進作用は各臓器に良好な影響を及ぼし、さまざまな健康増進が期待できるようです。

図2. インクレチンGLP-1のさまざまな作用
図2. インクレチンGLP-1のさまざまな作用