パーソナル化サプリメントのトッピング機能性成分(15)精神疾患の予防のために|株式会社シクロケムバイオ
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2023.2.10 掲載

パーソナル化サプリメントのトッピング機能性成分(15)精神疾患の予防のために

このシリーズではパーソナル化サプリメント(PS)における各個人の目的のためのトッピング機能性成分の科学的根拠を説明していきます。今回は精神疾患の予防のためのトッピング成分である5-ALA、GABA、δ-トコトリエノール、R-αリポ酸を紹介します。尚、5-ALAとGABAは機能性表示関与成分でもあります。

図1. 精神疾患予防のためのトッピング成分
図1. 精神疾患予防のためのトッピング成分

『病は気から』は昔から言い伝えられてきた言葉ですが、ヒトは心理的ストレスによって病気が生じることを経験的に知っていました。その作用機序はこれまでの多くの研究によって自律神経、内分泌系、免疫系と心理的因子の相互関与するものであることがかなり明らかとなってきています。

図2. 笑いと怒りによる健康状態の変化
図2. 笑いと怒りによる健康状態の変化

心理的ストレス、『怒り』『不安』『恐怖』『悲しみ』などの感情が持続すると、自律神経が不安定になります。自律神経は交感神経と副交感神経がありますが、怒ると交感神経が優位になってきます。交感神経が活発になると血圧をあげるように身体に指令が出され血圧の上昇に伴って血管は損傷を受け、血液は心臓や脳に運ばれにくくなってきます。実際、怒りやすい人の心筋梗塞の発症率は普通の人の5倍、脳梗塞は2倍という研究結果もあります。

自律神経が不安定のことを分りやすくいうと心の病気です。怒ってストレスが発生し、心の病気になりますと、内分泌物質によって免疫系の障害も引き起こします。副腎皮質から抗ストレスホルモンである『コルチゾール』が分泌します。『コルチゾール』はNK細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導し、NK細胞の活性も減少します。また、怒るだけでなく、悲しみやさまざまなストレスによっても『コルチゾール』は発生しますので、日常のストレスを無くすことがうつ病などの精神疾患の予防であり、最大のガン予防といえるのです。

また、NK細胞の活性化には適度な運動も効果的であることが分っています。運動習慣のある人はない人に比べ、NK細胞活性が高いことが分っています。テニスやウォーキングなど、日頃から有酸素運動を心がけましょう。

図3. 運動習慣とNK細胞活性
図3. 運動習慣とNK細胞活性

では、日常のストレスを無くすことと適度な運動とともに精神疾患の予防に有効なPSのトッピング成分とその作用について以下に説明します。

まず、GABAのストレス低減作用です。精神的ストレスは、大脳皮質や大脳辺縁系を経由し視床下部に伝達され、ストレス反応系である「視床下部-交感神経-副腎髄質系(SAM系)」が活性化されることにより発生します。SAM系が活性化されると血液中にカテコールアミンが放出され、血圧上昇・発汗・血糖上昇・覚醒・戦闘態度などの反応が表れます。したがって、交感神経を抑制することが精神的ストレスの軽減につながると考えられます。

GABAはカテコールアミンの一つであるノルアドレナリンの放出を抑制することで交感神経を抑制し、副交感神経を亢進して精神的ストレスを軽減することが知られています。

ここでは、GABAのストレス軽減メカニズムについて自然発症高血圧ラットを用いた早川らのグループの報告を紹介します。

Mechanism underlying g-aminobutyric acid-induced antihypertensive effect in spontaneously hypertensive rats (K. Hayakawa et al., European Journal of Pharmacology 438 (2002) 107–11)

GABAの摂取による血圧の低下作用とノルアドレナリン放出抑制による抗ストレス作用が示されています。

図4. GABAの血圧降下作用とストレス緩和メカニズム
図4. GABAの血圧降下作用とストレス緩和メカニズム

ラットへのGABA単回経口投与(0.5mg/kg)試験の結果、GABA摂取群はコントロール群に比べて、自然発症高血圧ラットの収縮期血圧が顕著に低下することが確認されています。(p < 0.01)一方で、正常な血圧のラットではもともと血圧に問題ないため低下はしていませんでした。

図5. GABAの血圧降下作用
図5. GABAの血圧降下作用

同様に、GABA摂取群はコントロール群に比べて、自然発症高血圧ラットのノルアドレナリンの放出も顕著に抑制でき、GABAに抗ストレス効果のあることが確認されています。(p < 0.01)

図6. GABAのノルアドレナリン放出抑制による抗ストレス作用
図6. GABAのノルアドレナリン放出抑制による抗ストレス作用

日本人の約7割は普段から不安や悩みを抱えており、約4割が「ストレスが溜まる」「精神的に疲れる」状態であることが報告されています。孤独や不安を感じる状態や、過度な精神的ストレス負荷が続くとうつ病につながるリスクとなります。うつ病の発症原因はまだ不明な部分も多いのですが、うつ病患者ではセロトニンの代謝産物やトリプトファンが減少していることが報告されていて、セロトニンの神経活動の低下が関わっていると考えられています。

5-アミノレブリン酸リン酸塩(5-ALA)の投与により、幸せホルモンと呼ばれるセロトニン濃度が上昇することが明らかになっており、セロトニン神経の活性化によりネガティブな気分が改善することが報告されています。

ここでは、5-ALA摂取によるセロトニンの増加によるストレス低減作用に関する下記論文を紹介します。

Melatonin counteracts the 5-aminolevulinic acid-induced rise of forebrain tryptophan and serotonin concentrations at night. (Daya S. et al., Neuroscience Letters 1990, 114, 113-116.)

32匹の5週齢のオスのSDラットを、明暗サイクル、明期14時間、暗期10時間(06:00から20:00まで点灯)で、8匹×4グループに分けて食物と水は自由摂取で、飼育しています。その結果、5-ALA投与は、実験の夜に光にさらされてストレスを受けたラットの前脳のトリプトファン、および、セロトニンを顕著に増加させており(いずれも p < 0.001)、ストレスの低減作用が示唆されています。

図7. 夜光にさらされストレスを受けたラットへの5-ALA投与によるトリプトファンとセロトニンの増加
図7. 夜光にさらされストレスを受けたラットへの5-ALA投与によるトリプトファンとセロトニンの増加

尚、セロトニン合成の為の出発物質(原料)はトリプトファンです。トリプトファンは必須アミノ酸で食事の中に含まれるタンパク質が消化分解して得られます。

トリプトファンはセロトニンの原料だけでなく、ビタミンB3として知られているナイアシンの合成にも使用されています。そして、ナイアシンの合成にはビタミンB6が必要です。ナイアシンを1モル作るために大過剰のトリプトファン(60モル)が必要になります。したがって、もしナイアシンが体の中になければ、トリプトファンは大量に消費されることになります。体外からナイアシンを十分に摂取できれば、トリプトファンから合成する必要がなくなり、トリプトファンをセロトニン合成の原料に回すことができることになります。

結論として、トリプトファンとナイアシンなどのビタミンB群を一緒に摂ることができれば、セロトニンが効率よく体内で生合成され、不眠症やうつ病などの神経疾患を予防できることになります。

セロトニンと同様に幸せホルモンと呼ばれているオキシトキシンという物質があります。オキシトシンは環内に特徴的にシスチンが組み込まれた環状ペプチドで、親しい関係にある者と接する時に盛んに分泌され、(2人の)結びつきを長くする作用のあるホルモンです。オキシトシンが分泌されると、他人を思いやる行動をするようになり、その自らの行動で自分自身も幸せを感じるようになります。オキシトシンはアミノ酸であるシステイン2分子が酸化されシスチンになることで環状構造が形成されます。つまり、シスチンがオキシトシンの生体内での合成に重要な出発物質の1つであり、シスチンの摂取は体内でのオキシトシンの増加による抗ストレス作用が期待できます。

次に、スポーツパフォーマンス向上のためのトッピング成分として『マイナス思考』を『プラス思考』に変えるために有効なスーパービタミンEであるδ-トコトリエノールを紹介していますが、このδ-トコトリエノールは抗ストレス低減効果でも注目されています。

『脳』は神経細胞の集合体です。その神経細胞を移動する神経伝達物質にはセロトニンとオキシトシンのみならず、ドーパミン、ノルアドレナリン、アセチルコリン等が知られており、それらのバランスによって『心』の状態が決まります。抗うつ薬はこれらの物質のバランスを調整する作用を求めて開発されています。

『脳』が健康であれば、人の心は喜怒哀楽があって『多感』です。しかし、うつ病という『心の病』を患うとプラスの感情である喜び、嬉しさ、楽しさを失い、マイナスの感情である不安、悲しみ、恐怖に支配されてしまいます。『脳』が健康な状態とは脳内の神経細胞が正常に働いている状態ですが、δ-トコトリエノールに神経細胞を正常な状態に戻し維持する(豊かな心を取り戻す)神経保護作用のあることが判明しています。

現在の日本人の食生活は精神疾患のリスクを軽減するために必須のω3不飽和脂肪酸が不足する傾向にあります。そこで、亜麻仁油に含まれるαリノレン酸や魚油に含まれるEPA・DHAなどのω3不飽和脂肪酸を積極的に摂取することで、ω3/ω6比を高め、精神疾患の予防やストレスの軽減が可能となります。

精神疾患予防・抗ストレス作用を。富山医科薬科大学の浜崎教授らのグループは、「DHAで学級崩壊やキレの問題に迫れるか?十代の若者と食事」と題した興味深い研究報告を行なっています。

小学生や中学生が突然キレる主な要因は日常摂取する油の質的、量的な変化にあると結論付けています。ω6不飽和脂肪酸であるリノール酸の過剰摂取は体内でω3不飽和脂肪酸の利用を妨げ、動物やヒトの行動に影響を及ぼしています。6~12歳の子供で、かんしゃく持ちや睡眠障害など問題がある場合、血中のω3不飽和脂肪酸が健児に比べ低下しているとのことが判明しています。大学生41人に3ヶ月間、DHAのカプセルを摂取し、その服用期間の前後でPFスタディをして、攻撃性、敵意性の変化をみたところ、明らかなDHAによる抗ストレス作用が確認されています。

図8. DHA摂取による敵意性の低減
図8. DHA摂取による敵意性の低減

最後に、(表1)に示すミトコンドリア病の症状のリスク低減のためにトッピング成分としてPSのゴールデンプレミアムに配合されているヒトケミカルのCoQ10、R-αリポ酸、L-カルニチン、そして、PQQの配合を推奨します。精神疾患はミトコンドリア病の一つの症状であり、これらの成分が不足することによって発症することが判っています。

表1. ヒトケミカル不足で起こるミトコンドリア病の症状
臓器 症状
中枢神経 痙攣、知能低下、認知症、偏頭痛、神経症状、脳卒中様症状など
骨格筋 筋力低下、易疲労性など
心臓 不整脈、心筋障害、心臓機能低下など
視神経委縮(視力低下)など
肝臓 肝機能障害、肝不全など
腎臓 尿細管機能障害など
膵臓 糖尿病など
血液 貧血など
内耳 感音性難聴など
大腸・小腸 下痢、便秘など
皮膚 発汗低下、多毛など
内分泌腺 低身長など

『難病情報センターHP ミトコンドリア病の症状』より一部改変

以上、精神疾患の予防のためのPSのトッピング成分を紹介しました。ストレス状態に不安のある方々は、ゴールデンプレミアムベースを選択し、ノルアドレナリンの放出抑制作用のあるGABA、幸せホルモンであるセロトニンを増加させるための5-ALA、トリプトファン、ビタミンB3、もう一つの幸せホルモンであるオキシトシンを増加させるためのシスチン、『プラス思考』のためのδ-トコトリエノール、そして、敵意性低減のためのαリノレン酸やDHAと言ったω3不飽和脂肪酸を、個人個人の状態に合わせてトッピングしていただきたいと思います。