パーソナル化サプリメントのトッピング機能性成分(16)高血圧の予防のために|株式会社シクロケムバイオ
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パーソナル化サプリメントのトッピング機能性成分(16)高血圧の予防のために

このシリーズではパーソナル化サプリメント(PS)における各個人の目的のためのトッピング機能性成分の科学的根拠を説明していきます。今回は高血圧の予防のためのトッピング成分であるGABA、ピペリン包接体、アマニオイル包接体、ヒシエキス、ヒトケミカルのCoQ10とR-αリポ酸を紹介します。尚、GABA、ピペリン、アマニオイル包接体のα-リノレン酸は 機能性表示関与成分でもあります。

図1. 高血圧の予防のためのトッピング成分
図1. 高血圧の予防のためのトッピング成分

まず、GABAの血圧降下作用ですが、既に、前回の「(15)精神疾患の予防のために」で説明しています。自然発症高血圧ラットを用いた試験において、GABAはカテコールアミンの一つであるノルアドレナリンの放出を抑制することで、交感神経を抑制し、副交感神経を亢進して精神的ストレスを軽減するとともに血圧が低下することが確認されています。(小林ら, 薬理と治療, 34(12), 1323-1341 (2006))

尚、小林製薬のGABAの血圧低下作用に対する機能性表示申請書類には、作用機序としては、ノルアドレナリンの放出抑制とともに、心・血管系に繋がる末梢自律神経節を一過的に遮断して、心・血管の筋収縮を部分的に抑制することにより、血管を拡張させ血圧を降下させるメカニズムも提唱されているようです。

次に、ピペリンによる血圧降下作用について、ピペリンもGABAと同様に機能性表示関与成分となっています。ピペリンの血圧降下作用の機能性表示が受理されることとなったヒト試験は学術誌『薬理と治療』への2015年の報告によるものです。

ピペリンの血圧降下作用に関するヒト試験
ピペリンの血圧降下作用に関するヒト試験

対象者は、正常高値血圧者またはI度高血圧者のうち、医師の管理下での治療が必須ではないと考えられる120名(男性93名、女性27名)です。図2に示すように、試験食摂取期間(12週間)と後観察期間(4週間)全ての期間において、試験食群(ピペリン摂取群)はプラセボ群と比較して、顕著に(有意に)収縮期血圧は降下していました。この論文の考察として、ピペリンは一酸化窒素を活性化することによって、血管弛緩作用を示し、血圧を低下させたものと考えられています。機能性表示のためのピペリン摂取量は90µg/日です。

図2. ピペリン摂取による血圧の推移
図2. ピペリン摂取による血圧の推移

尚、ピペリンは脂溶性物質なので胃液・腸液中での溶解度は低く、吸収性は高くないのですが、αオリゴ糖に包接によって消化液中での溶解度は顕著に改善でき、生体への吸収性向上を期待できることが判明していますので、PSとトッピング成分としてはピペリンそのものではなく、ピペリン包接体を採用しています。

図3. ピペリンのαオリゴ糖による人工腸液での溶解度向上
図3. ピペリンのαオリゴ糖による人工腸液での溶解度向上

また、アマニ油に含まれるαリノレン酸による血圧降下作用についても、αリノレン酸はGABAとピペリンと同様に機能性表示関与成分となっています。
(Takeuchi H et al, J. Oleo Sci., 2007, 56:347-60.)

αリノレン酸による血圧降下作用は2つの作用機序が考えられています。その1つは、血圧調節に関わる酵素であるアンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害することで、血管収縮および Na 再吸収が抑制され、血圧を低下させるというものです。

高血圧ラットを用いた試験において、α-リノレン酸の摂取により、ACE 活性を低下させることが確認されています。

Ogawa A et al., Dietary alpha-linolenic acid inhibits angiotensin-converting enzyme activity and mRNA expression levels in the aorta of spontaneously hypertensive rats.
(J. Oleo Sci., 2009, 58:355-60.)

6週齢の自然発症高血圧ラット(SHR)にαリノレン酸(ALA)が豊富な亜麻仁油を10%含む食餌を4週間与えています。その結果、ALA群の収縮期血圧はコントロール群よりも顕著に低いことが示されました。

図4. αリノレン酸摂取による収縮期血圧の変化
図4. αリノレン酸摂取による収縮期血圧の変化

また、大動脈におけるALA群のアンジオテンシン変換酵素(ACE)活性はコントロールよりも顕著に低いことが確認され、ALAの血圧低下メカニズムにはACE活性の低下が関与している可能性が示唆されました。

図5. ALA摂取による大動脈におけるACE活性の低下
図5. ALA摂取による大動脈におけるACE活性の低下

もう一つのメカニズムは血管拡張作用のあるブラジキニン刺激によるプロスタグランジンI2と一酸化窒素の増加が関連していると考えられています。ブラジキニンとは9つのアミノ酸が結合したペプチドで血圧降下作用を持つ生理活性物質です。

Lowering systolic blood pressure and increases in vasodilator levels in SHR with oral alpha-linolenic acid administration.
(Sekine S et al., J. Oleo Sci., 2007, 56:341-5)

この論文では、α-リノレン酸の経口投与による自然発症高血圧ラットの収縮期血圧と血管拡張作用のある血漿中ブラジキニンについて、投与して1日目と5日目のそれらの変化を調べています。

その結果、1日目の経口投与から4時間後、ALA群の収縮期血圧はコントロール群よりも顕著に低いことが前述の論文と同様に示されました。

図6. αリノレン酸摂取による収縮期血圧の変化
図6. αリノレン酸摂取による収縮期血圧の変化

さらに、血管拡張作用のある血漿中ブラジキニンのレベルはALA群の方がコントロール群よりも顕著に高く、プロスタグランジンI2と一酸化窒素の増加が確認されました。したがって、この研究は、ALAが自然発症高血圧ラットの収縮期血圧を低下させる作用機序として、ブラジキニン刺激によるプロスタグランジンI2と一酸化窒素の増加に関連している可能性が示唆されました。

図7. αリノレン酸摂取による血漿中プラジキニン、プロスタグランジンI2、一酸化窒素の変化
図7. αリノレン酸摂取による血漿中プラジキニン、プロスタグランジンI2、一酸化窒素の変化

尚、αリノレン酸は多価不飽和脂肪酸であり酸化しやすく不安定な物質であり、消化液中の溶解度も低く吸収性が低いため、αオリゴ糖包接によってこれらの問題を克服しています。したがって、PSとトッピング成分としてはアマニ油そのものではなく、アマニオイル包接体を採用しています。

さらに、ヒトケミカルのCoQ10とR-αリポ酸、そして、ヒシエキスにもアディポネクチン産生による血圧低下作用があります。これらの成分のアディポネクチン産生に関しては(がんにならないために)の項で説明しています。

以上、高血圧の予防のためのPSの推奨トッピング成分を紹介しました。血圧が高めの方々は、PSの健康Wベースに加えて、ゴールデンプレミアムベースを選択していただき、さらに、症状に応じて、GABA、ピペリン包接体、アマニオイル包接体、ヒシエキスをトッピングしてみてはいかがでしょうか?