R-αリポ酸の効能とS-αリポ酸の毒性に関する論文の要約と考察(5)|株式会社シクロケムバイオ
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2018.8.21 掲載

R-αリポ酸の効能とS-αリポ酸の毒性に関する論文の要約と考察(5)

現在、このシリーズではS-αリポ酸、市販のαリポ酸の毒性に関する論文を紹介しています。今回は、(1)から(4)までの論文の概要と、これから取り上げる論文の概要を箇条書きでまとめておきます。

(1)肥満患者に危険なS-αリポ酸の毒性
l GLUT4が減少する ⇒ 細胞がブドウ糖を利用できない
⇒ 糖尿病を発症する、糖尿病患者の場合は糖尿病が悪化する
(一方、R-αリポ酸でブドウ糖の取り込みは改善される)

(2)がんなどの慢性疾患患者に危険なS-αリポ酸の毒性
l ビタミンB1欠損ラットの死亡率が上昇する
⇒ がんや慢性感染疾患など慢性疾患患者が死亡する
(一方、R-αリポ酸で死亡率は低下する(生存率は上昇する))

(3)脂質異常症、動脈硬化症、虚血・再灌流障害患者に危険なS-αリポ酸の毒性
l 虚血-再灌流障害を悪化させる ⇒ 認知障害など機能障害を悪化させる
⇒ 脳梗塞や心筋梗塞を起こし、死亡する可能性がある
(一方、R-αリポ酸で虚血-再灌流障害は緩和改善される)

(4)糖尿病患者に危険なS-αリポ酸の毒性
l GLUT1とGLUT4の膜移動阻害 ⇒ 細胞がブドウ糖を利用できない
⇒ 糖尿病が悪化し死に至る可能性がある
l 生体内のタンパク質が糖化しやすくなる ⇒ 老化しやすくなる
l 死亡率が急激に高まる ⇒ 糖尿病患者がS-αリポ酸で死亡する
(一方、R-αリポ酸には糖尿病治癒効果があり死亡率は低下する。

S-αリポ酸の毒性に関する報告は上記4報に加え、脳機能の悪化についても報告があります。
脳機能改善のための栄養素について(6)R-αリポ酸

イタリアのTomassoniらのグループの報告です。International Journal of Molecular Scienceに2013年2月に発表しています。高血圧自然発症(脳血管障害モデル)ラットを用いS-αリポ酸は脳疾患を悪化させ、R-αリポ酸は改善することを示しています。

これまでは、S-αリポ酸の毒性に関する論文でしたが、次回から、R-αリポ酸による効能についての論文を紹介します。

抗酸化とミトコンドリア機能の改善

(6)R-αリポ酸によるミトコンドリア機能の改善

R-α- Lipoic acid-supplemented old rats have improved mitochondrial function, Decreased oxidative damage, and increased metabolic rate (R-αリポ酸を摂取した老齢ラットはミトコンドリア機能が改善し、酸化損傷が減少し、そして、代謝速度が増加する)

Tory M. Hagen et al., FASEB J. 13, 411-418 (1999)

(7)R-αリポ酸による肝臓代謝と酸化ストレス疾患に対する治癒効果

α-Lipoic acid in liver metabolism and disease (肝臓代謝と疾患におけるαリポ酸)

J. Bustamante et. al., Free Radical Biology & medicine, 24(6), 1023-1039 (1998)

(8)R-αリポ酸のNADH, NADPH還元に対する細胞質とミトコンドリアシステム

(9)ミトコンドリアの微量栄養素と抗酸化剤による老化の遅延

(10)R-αリポ酸による加齢に伴う肝細胞感受性増加の逆転

(11)抗酸化剤としてのR-αリポ酸と脳ミトコンドリア減衰および老化の遅延

(12)活性酸素によって引き起こされる皮膚炎を阻害する抗酸化剤:レドックス対ジヒドロリポ酸塩/リポ酸塩の評価

(13)R-αリポ酸による哺乳動物由来ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体の活性化

(14)R-αリポ酸によるは血管性認知症患者のピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性化

(15)R-αリポ酸によるパーキンソン病におけるグルタチオン低下の抑制

(16)R-αリポ酸によるD-ガラクトース誘導性記憶障害及び酸化ダメージの抑制

(17)αリポ酸はアルツハイマー型認知症に対する治療薬として新たな選択肢

あくまでも、今後の予定ですので、変更する場合もありますのでご了承ください。