シクロデキストリンが生んだ「あの製品」

3万トンのタマネギを救え!

[写真] きた味おにおんスパイス

商品名 『きた味おにおんスパイス』
会社名 KITAMIブランドの会

わさびとタマネギ、どちらも同じ辛味仲間

タマネギにもわさびと同じ仲間のアリル化合物群が豊富に含まれています。タマネギを切ると涙が出るのは、ただ切るだけでアリル化合物群が簡単に揮発して拡散し、目にも入ってしまうからなのです。
日本一のタマネギ産地、北海道北見市で開発された「きた味おにおんスパイス」(KITAMIブランドの会)は、生タマネギの辛味を生かしたちょっと珍しいスパイス・ソルト。他のスパイスメーカーから「オニオン・ソルト」なるものが出ていますが、そちらは炒めタマネギの甘味を生かしたもので、コンセプトが全く異なる製品。似たような製品は見当たりません。この新コンセプト製品を生み出す要となったのもやはり環状オリゴ糖です。その開発の背景には、地元のある切実な思いがありました。

3万トンのタマネギを救え!

2002年秋、北見の畑にトラクターが入り、タマネギを次々に押しつぶしました。大豊作と消費低迷が重なり、じつに3万トンが廃棄処分されたのです。
北見市は日本のタマネギ生産量の25%ものシェアを誇りますが、近年は値段の安い中国産に押され、価格競争では太刀打ちできません。タマネギの消費拡大のためにも地元発のタマネギ 加工品を…そんな期待を一身に背負って「きた味おにおんスパイス」の開発は始まりました。

難しいコンセプト

「生タマネギのフレッシュ感と辛みを生かした焼肉スパイス」。会議ではそう決まったものの、これは非常に難しいコンセプトでした。スパイスに加工するにはタマネギを乾燥しなければなりませんが、9割以上が水分であるタマネギは、加熱するとベタついてしまいます。しかも、コンセプトとはまったく反対にコクと甘味が引き出されてしまうのです。
そこで採られたのはインスタントコーヒーの製造方法としても知られる加工法、フリーズドライ(凍結乾燥)。マイナス30度の真空状態で食品に含まれる水分を取り除きます。するとベタつきは出なかったものの、香りも辛さも生のタマネギとは程遠いものになりました。揮発性の高いアリル化合物群は、これほどの低温でも水分と一緒に揮発してしまっていたのです。

化学調味料なし、自然の不思議な恵み

ここで使ってみたのが環状オリゴ糖。タマネギの中に充分浸透しアリル化合物群と相性の良いものとして、環状オリゴ糖に麦芽糖を付加したものが選ばれました。フリーズドライの過程でこの環状オリゴ糖を加えたところ、見事に生タマネギの香りと辛みが口の中に広がりました。環状オリゴ糖がアリル化合物群を包接し、揮発を防いだのです。
さらに網走沖の海洋深層水を加えてみたところ、なぜか一段とタマネギの辛さが際立ち、思わぬ収穫に。化学調味料はもちろん、フリーズドライの過程で一般によく添加される酸化防止剤等も使わないことにこだわり、自然の恵みをいっぱいに詰め込んだ新しい北見の特産品が生まれたのです。
商品化に際しては地元市民の審判も仰ぎ、評判も上々。「焼き肉の街」ともいわれる北見にふさわしい特産品として、2003年9月ついに販売にこぎつけました。販売地域はまだ北見市内に限られています(2005年7月現在)が、今後はさらなる拡大をはかるそうです。
もう辛い思いをしてタマネギ畑をつぶさずに済みますように…環状オリゴ糖も一役買ったでしょうか。

引用 『世界でいちばんちいさなカプセル』より