シクロデキストリンが生んだ「あの製品」

プラスチックに機能性を埋め込むアイデア わさびの力でお弁当を守る!

[写真] わさパワー

商品名 『わさパワー』(弁当いたみ防止シート)
会社名 積水化成品工業株式会社
カプセル α、β、γ−シクロデキストリン
その中身 アリル辛子油

辛いだけじゃない!わさびの抗菌制菌パワー

 チューブ入りわさびの項でとりあげたアリル辛子油には抗菌制菌作用もあることが知られています。いくら抗菌作用が強くても、すぐに揮発してしまうのでは意味がありませんが、これを環状オリゴ糖に包接させておけば揮発を防ぎ、抗菌力を持続させることができます。また、環状オリゴ糖に包接させると粉末状になるため、プラスチックに混ぜる等の加工が可能になります。
 積水化成品工業の『わさパワー』は、業務用に開発されたお弁当いたみ防止シート。アリル辛子油を環状オリゴ糖に包接させたものをプラスチックフィルムの中に加工して埋め込んでいます。また、特殊な加工を施しているため、辛みがお弁当に移ることもありません。

まだまだある、シートに埋め込む発想

 同じような発想で、環状オリゴ糖を利用することにより機能性を埋め込んだプラスチック製品が多数開発されています。
 洋服を買いに行くとセーター等がよく袋に入って売られていますね。薄くて透明性が高く、パリッとした張りのあるあの袋はポリビニルアルコールという樹脂でできています。中の商品が見やすく、静電気が起きにくいという利点がある一方、紫外線をよく透過させるため、鮮やかな流行色の服が色褪せたり脆くなったりしてしまうという問題点があります。それを防ぐため、紫外線吸収剤を環状オリゴ糖に包接させて練り込んだポリビニルアルコールフィルムが開発されています。このフィルムは紫外線の波長である340nmの光線透過率を0.3%にまで抑えることに成功しています。
 ほかに、アリル辛子油やヒノキチオール、ヨウ素などを環状オリゴ糖に包接させ、これを埋め込んだ樹脂で、抗菌・防カビ性の壁紙、床、カーペット、家具等が開発されています。
 野菜・花・果樹等を栽培する畑では、虫除け効果のあるヒノキや松脂の成分をβシクロデキストリンに包接して粉末化し、埋め込んだフィルムが病害虫や病害菌の防除に役立っています。
 また、ラベンダー、メントール等さまざまな香料を環状オリゴ糖に包接させ、これを埋め込んだ樹脂で香り付き消しゴム、香りが心地よい眠りを誘うイビキ防止ゴム『ファイナルイビキストッパー』(株式会社ミヤカワ)等が製造されています。

機能性衣類への応用

 プラスチックシートだけでなく、繊維に埋め込むことによって衣類に機能性を持たせた製品も出ています。グンゼ株式会社の『ナチュラルインナー』は保湿成分のスクワランを環状オリゴ糖で包接し繊維に埋め込んで付着させた肌着です。
 株式会社ヤギの『ATOPURE(アトピュア)』は、アトピー肌改善のための肌着。γリノレン酸を環状オリゴ糖類(モノクロロトリアジノβシクロデキストリン:MCTβCD)に包接させ、それを綿の繊維に直接結合させることにより、洗濯に耐えるよう工夫したものです。
 繊維の種類によっては、環状オリゴ糖を直接結合させることができないものもあります。その場合でも、環状オリゴ糖をポリカルボン酸でできた長い紐のような高分子に結合させ、その高分子を繊維にしっかりと絡みつかせる方法をとれば、洗濯等で簡単に落ちるようなことはありません。

『世界でいちばんちいさなカプセル』より編集・抜粋