株式会社シクロケム
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農学とシクロデキストリンの接点(3)

里山の活性化、難病にサプリメント提供。希望に向かって脹らむ、それぞれの夢

今回は、それぞれの夢を中心に話が展開しました。平田先生はひとつの里山全体を、その豊かな資源を見直し、掘り起こし、それらを産業として組み立てることで経済的にも社会的にも活性化させたいと声を弾ませます。一方、寺尾社長は、遺伝性難病のひとつであるレックリングハウゼン病(神経線維腫症I型)に有効なサプリメントとして注目されるニュージーランド産プロポリスをシクロデキスリンで包接することで、より効力を向上させて提供することを使命と感じていると明言します。3回にわたる対談を通じて、農学と化学のコラボレーションの可能性を確認するとともに、将来的に素晴らしい成果が結実することを期待し、最後を結びました。

小川を利用して水力発電を起こし山の恵みや川の恵みを売り出す

寺尾:これからぜひやってみたいと思われていることはありますか。

平田:いま、里山が過疎化などの問題を抱えて、元気のないところが多くなってきています。それで、小さな里山でいいのですけど、そうした地域全体を経済的にも社会的にもいきいきと甦らせて、ひとつの活成化モデルをつくりたいという夢をもっています。すでに成功しているところもありますからね。

寺尾:私の地元ですが、岡山県の賀陽町辺りにもちょうどいい里山があります。候補地として視察してみてはいかがでしょう。

平田:付近の小さな川を利用して水車で水力発電を起こし―2mの落差があればできます―、そしてその土地の条件に合った農産物をつくったり、山の恵みや川の恵み、つまりヤマブドウやキノコを採取したり、木炭をつくったり、川魚を獲ったりして売り出す。岩手県(葛巻市)などでは、木を都会に売って、成果を上げていますから、木も販売対象になりますね。その土地の人には、その土地のよさが当たり前になっているために、かえって見えなくなっていることが多いものなのです。僕のような外部の人間が乗り出して行って、客観的な視点で資源を見直したり、掘り起こしたりして、産業として総合的に経済基盤を組み立てる意味は大きいと思います。

寺尾:日頃、培ってきた研究や技術が現場で広く活きることにもなりますよね。私の会社は東京に本社、神戸に研究室があって、私は本社で週3日、研究室で週2日活動しています。これは文字通り、研究・技術畑と、それを目のみえるカタチで役立てる営業畑、ふたつのフィールドで仕事をしていることであり、非常にいい循環を生み出していることを実感しています。

平田:近いうちに、その岡山の里山をぜひ案内していただきたいですね。ところで、寺尾先生はどんな夢をお持ちなのでしょうか。

寺尾:夢といいますか、最近、ひとつの使命を感じて、それを実践しなくてはという気持ちになっています。レックリングハウゼン病(神経線維腫症I型)という難病をご存知でしょうか。皮膚、神経を中心に多くの器官に神経線維腫をはじめとするさまざまなの異常の生じる病気で、腫瘍(できもの)や色素斑(しみ)など皮膚症状が強いのが特徴です。人口 3000人に1人の割合で発症し、患者さんの約 50%は両親のどちらかがこの病気という遺伝的に発病した人です。病気が起こるメカニズムはわかっているのですが、医薬品メーカーは営利が目的ですから、購買量の見込めない薬の開発にあまり積極的とはいえず、やっと臨床実験がはじまったぐらいのところです。この病気の薬の研究・開発に携わる丸田浩先生は、このまま薬を待っていたらあと 10年は掛かると見通し、サプリメントに有効なものはないかといろいろ探したといいます。その結果、白羽の矢が立ったのが、ニュージーランド産のプロポリスでした。日本産や中国産、ヨーロッパ産のプロポリスの有効成分はフラボノイドが中心です。一方、ブラジル産やニュージーランド産のプロポリスの主要な有効成分は桂皮酸誘導体であることがわかっています。実際、 70人の患者さんにニュージーランド産プロボリスを摂取してもらったところ、効果のあることが明らかにされました。実は、私ども(株)シクロケムは期せずして昨年6月、マヌカハニーやプロポリス、ローヤルゼリーなどを手掛けるニュージーランドのマヌカへルスニュージーランド(株)と独占販売契約を結んでいたのです。

平田:何事にもタイミングというのがありますけど、協力するように運命づけられている、そんな感じですね。

寺尾:そうなんです。さらに、この有効成分の桂皮酸誘導体は水に溶けにくいという問題点があるのですが、コエンザイムQ10の場合と同じで、シクロデキストリンで包接することで、水に分散しやすくなり、吸収性を高めることが可能になります。これをできるのは、世界広しといえども恐らく、(株)シクロケムだけです。ちょうど3月のはじめに、日本プロポリス協議会から依頼された招待講演で、「シクロデキストリンによるプロポリスの特性改善」と題する話をしたところでもあります。ニュージーランド(プロポリスの製造元)、ドイツ(シクロデキストリンの研究・開発地)、日本(プロポリスをシクロデキストリンで包接)をネットワークし、レックリングハウゼン病で苦しむ患者さんのために、営利には関係なく協力しなければならないという気持ちになっています。企業の社会貢献として、いま、私どもがやらなければいけない使命として受け止めるようになっています。先頃、丸田先生やレックリングハウゼン病の患者さんを救うためのNPO法人の方とも、連絡を取り合い、協力を申し出ました。

若者たちよ!閉じている自分を開放してもっと元気に。感覚や直感も鍛えてほしい

平田:僕にはもうひとつ夢というか、希望があって、それは若者に元気になってもらいたいということです。内側に自分を閉じ込めて、エネルギーの放出を閉じている若者が多いのがとても気にかかります。僕の学生時代を振り返ると、勉強も一生懸命しましたが、さまざまな友だちと熱く付き合い、刺激を受けたものです。できるヤツ、尊敬できるヤツ、信頼できるヤツ、いろいろいてホント、面白かった。人と接することではじめて、相手のことがわかるし、何より自分というものがよくわかってくるのです。そのことをもっと知ってほしいですね。

寺尾:現在、平田先生の研究室には何人の学生がいるのですか。

平田:30人です。そのうち、ベトナム、ラオス、カンボジア、韓国、中国などからの留学生が 12人です。優秀な学生が多いですけど、なかには伸び悩んでいて卒論の間際ぐらいからグンと伸びる学生もいます。そんなときは、「待ちの子育て」の大切さをつくづく実感します。自分の子どもの場合はこうはいかないのですが、他人の子どもの成長は待てるんですね(笑)。

寺尾:博士論文に取り組んでいる学生もいるんですか。

平田:修士論文、博士論文、両方ともいます。これらの学生とはとことん付き合うようにしています。教えたり、指導したりすることは、自分自身の頭のなかを整理したり活性化するのにもとてもいいことなんですよ。真面目な話、寺尾先生も研究室をもって、学生の人数にはこだわらず、ひとりでもいいので、その論文の面倒をみるようにしていただくといいと思うんですよ。

寺尾:神戸学院大学や中央大学で講師をしていたときは、学士論文の指導もしていましたから、経験はあるんです。東京農工大学でもやってみたい気持ちはありますし、スケジュールの面でも支障をきたさないと思います。

平田:学生と接することで、若い人の感覚を肌で理解することにもなりますしね。若者たちには、感覚や直感を鍛えてほしいとも思っています。それには、いい文学やいい音楽、いい映画、いい絵画など、素晴らしい芸術とよく親しみ、まだ知らない土地、知らない国にどんどん出掛けて行っていい旅をするようにと、いつも勧めています。そういう気持ちもあって、僕自身、学生たちを海外によく連れて行きます。

寺尾:若者に接するといえば、アイドルグループ「嵐」の実験番組や 24時間番組などで、平田先生が出演しているのを観させてもらいましたが、彼らとはそもそもどんな関係があるのですか。

平田:直接の関係は何もありません。僕の研究に興味をもってくれた番組のディレクターから出演依頼があったというだけのことです。「嵐」のメンバーと身近に接してみて、頭の回転がよくて、とても気持ちのいい若者たちだという印象をもちました。なかでも、相葉雅紀クンとは実家が中華店をやっているということで、待ち時間などがあると、食べ物の話題などでよくおしゃべりして仲良しになりました。画面から伝わる通りの明るく爽やかな好青年です。

寺尾:最後にひとつ、お願いがあります。ご存知のように、プロポリスはミツバチが花粉や蜜とともに運んできた樹皮のヤニなどからできています。有効成分を抽出したあと、残りの成分のなかにトリアコンタノールなど高級アルコールが含まれています。この高級アルコールはイネなどの作物の増収作用があることが分かっていますが、水に溶けにくいので水溶液として噴霧できず、利用が難しいものです。そこで、シクロデキストリンで包接すると分散性と吸収性を高めることが可能となります。それで、お願いというのは、これを実際に実験で検討してほしいということなのです。

平田:わかりました。せっかくの実験ですから、「高級アルコール&シクロデキストリン」を使用する田畑と、「堆肥」を使用する田畑に分けてイネや野菜を育て、その増収量を比べてみてはどうでしょう。そして、最後に味を比べてみるモニタリングも大切だと思います。

寺尾:ぜひ、お願いします。いろいろお話するなかで一緒に協力してできることがどんどん出てきて、将来的に、農学と化学のコラボレーションで素晴らしい成果が結実することが期待できそうですね。大いに楽しみにしています。


終わりに

平田:4億年前から本格的に利用してきた光合成のシステムですが、永遠に続くかというと、そうとは限りません。これからも二酸化炭素が増え続ければ、光合成以前の環境に逆戻りするかも知れません。その意味で、環境問題は人類の存亡に関わっているといっても決して過言ではないのです。

寺尾:ニュージーランド(プロポリスの製造元)、ドイツ(シクロデキストリンの研究・開発地)、日本(プロボリスをシクロデキストリンで包接)をネットワークし、レックリングハウゼン病で苦しむ患者さんのために、営利に関係なく協力しなければならないという気持ちになっています。

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