株式会社シクロケム
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サプリメントの現代事情とシクロデキストリン(2)

安定性のエビデンスは最優先されるべきもの。メーカー側からデータを

薬剤の専門家でありサプリメントにも詳しい堀美智子先生をゲストに迎えた2回目の今回は、寺尾社長が『国際シクロデキストリンシンポジウム』で講演した際、参加者からの質問に答えたという、γ-シクロデキストリンで包接されたCoQ10の吸収性と安定性の素晴らしさを中心にトークが進みました。

低水溶性、高分散性、スローリリースの特性により48時間の吸収性の持続を実現

寺尾:去る5月に開催された『第14回 国際シクロデキストリンシンポジウム』で、私が講演したときの話を少し紹介したいと思います。このシンポジウムは2年に1回、各国もち回りで行なわれていまして、今年は日本の京都で催され、私は日本シクロデキストリン学会の理事を務めている関係もあり、産業界の立場で講演を依頼されました。

堀:シクロデキストリンについてはどのようなことをお伝えになりたかったんですか。

寺尾:講演の最後に5分間ほど質疑応答の時間がありまして、実はそこでの2つの質問と答えが一番強調したかったことです。簡単に再現したいと思います。ひとつ目の質問は、「γ-シクロデキストリンに包接されたCoQ10の持続性(48時間にわたり吸収性を持続)はどうして起こっているのか」というものでした。それに対して、「私のオリジナルな考察ですが、大いに自信をもっています」と前置きしてから、次のように答えました。
「γ-シクロデキストリン包接化Q10は低水溶性で高分散性を示し、水分へのなじみが非常によいのが特徴です。水に溶かそうとすると、水に溶けづらく濁ることからもそれがよくわかります。γ-シクロデキストリン包接化Q10粒子のサイズは大半が100nm(ナノメートル/1nm=10億分の1m)前後。腸壁の微絨毛(ここから体内に吸収される)もちょうど同じく100nm前後なのがわかっています。腸内で微粒子状の包接化CoQ10はゆっくりと移動しながら、微絨毛間でγ-シクロデキストリンから乖離したCoQ10は体内に入っていくことになります。こうした低水溶性、高分散性、スローリリースの特性から、γ-シクロデキストリンに包接されたCoQ10は48時間という長時間にわたる吸収性の持続を実現するものと考察されるわけです」と。

堀:普通、水に溶けることが、吸収性を高めることにつながると考えられますが、γ-シクロデキストリンに包接されたCoQ10では可溶化ではなく、微粒子化がポイントで、腸壁の微絨毛に留まりながら包接からはずれたCoQ10は徐々に体内に吸収されることになるのですね。乳化剤を用いた水溶化CoQ10よりも、γ-シクロデキストリンに包接されたCoQ10が吸収性に優れている理由がそこにあると予測されるということですね。

寺尾:まさにその通りです。堀先生は薬剤の専門家だけに、要所を的確に指摘してくださいましたが、そこがもっとも重要なポイントです。


γ-シクロデキストリンにガードされることで、光や熱の影響や配合変化を回避

堀:もうひとつの質問はどんなものだったのですか。

寺尾:安定性についてでした。時間の関係で、講演の中ではさらっと触れただけだったので、案の定、最後に改めて質問を受けることになりました。

堀:錠剤のなかでCoQ10が変質することなく安定に存在するものかどうかということは大きな問題ですよね。

寺尾:CoQ10それ自体は、熱や光に非常に弱いですし、さまざまな酸化性物質などと配合変化を招きやすいことがわかっています。ところが、γ-シクロデキストリンで包接すると、これらの問題点がほとんど改善されるのです。

堀:γ-シクロデキストリンによって、外部からの影響をシャットアットしてしまうわけですね。

寺尾:そうです。CoQ10は構造的に、キノンという骨格とそこからヒゲのようにのびるイソプレンの二つの部位で構成されています。注目すべきはイソプレン部位で、この部分が光や熱などに影響されやすく、酸化を受けやすいのです。
さて、γ-シクロデキストリンですが、CoQ10を包接するとき、うまい具合に、その内部空洞にイソプレン部位だけを取り込みます。実際は、ふたつのCoQ10がキノン部位を反対にして合体し、イソプレン部位を5つのγ-シクロデキストリンが包接するカタチになります。2個のCoQ10と5個のγ-シクロデキストリンでユニットをつくっているわけです。このようにイソプレンの部分がしっかりガードされることで、光や熱の影響を回避できますし、さまざまな酸化性物質などと反応することも避けられるわけです。なお、CoQ10は強力な抗酸化作用を発揮することでもわかるように、体内では還元型で存在します。

堀:CoQ10のサプリメントを使用するうえで、もちろん吸収性も大切ですけど、安定性というのは極めて大切なポイントです。普通はCoQ10を紫外線を素通しする容器などに移し変えたりすると、性状が変化してしまう危険性があります。さらに、こうした性状の変化により生じた物質が、私たちの体に有害に作用するかどうかもたいへん心配されます。安定性が確保されなければ、CoQ10の作用が期待できなくなるだけでなく、CoQ10の配合量が多い場合、変質してできた物質でかえって、その悪影響も増す可能性があるわけですよね。こうした安定性への視点をもつことは、メーカーにも、販売者にも、使用者にもとても重要なことであると思います。

寺尾:サプリメント全般にいえることですが、安定性のエビデンスは最優先されるべきものであり、メーカー側からきちんとデータを出していくことが大事ということでしょうね。当社としても、さらに充実したデータを出して行きたいと考えています。次回は、サプリメントと薬の相互作用の話などを取り上げたいと考えています。


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