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サプリメントの現代事情とシクロデキストリン(3)

サプリメントは賢く上手に使うことで、そのパワーを遺憾なく活用

ひとりひとり健康状態は違うわけで、自分の体に合ったサプリメントを選ぶことが肝心。それには何といっても、正しい知識を持つことがカギを握っています。サプリメントと薬の相互作用の問題や、各国の健康に関する教育システムの在り方など、薬剤の専門家でありサプリメントにも詳しい堀美智子先生とともに熱く語り合いました。

他の医薬品と一緒に摂っても安全か?サプリメントと薬の相互作用の確認を

寺尾:前回のトークのなかで、サプリメントの安定性を重視すべきことを話し合いました。
光や熱による影響、また配合変化などによって物質が変性することで、生体に悪い影響を及ぼす心配があると指摘しました。サプリメントの安定性についてはもうひとつ、相互作用の問題に留意する必要があります。

堀:他の医薬品と一緒に摂っても安全かどうかといった点を知っておくべきことはたいへん重要です。中高年ともなると、生活習慣病の予防・改善のための医薬品を服用している人も少なくないはずです。サプリメントを摂るとき、あらかじめ、それらの薬との相互作用を考慮しておくことが大切ということです。

寺尾:具体的に例を挙げて、少しお話いただけますか。

堀:今年4月から、メタボリックシンドロームの予防、早期発見を目的とする特定健康診査が始まりました。メタボとは、腹囲が男性で85cm以上・女性で90cm以上あり、しかも高血圧、高血糖、高中性脂肪などの症状のうち2つ以上が基準値を超える場合をいいます。実際には、喫煙やBMIなども考慮され、検診結果から必要と判断された方は、保健指導を受けることになります。
そんな保健指導で食生活の主要なアドバイスのひとつは、野菜を十分に食べること。例えば、野菜に多く含まれるカリウムはナトリウムと拮抗的に働くため、血圧を下げる効果が期待できます。ひいては、心筋梗塞や脳卒中による死亡率を低下させることにつながるというわけです。それで、カリウムを1日3.5g以上摂取することが勧められているのです。
その一方、カリウムを摂り過ぎると高カリウム血症を引き起こす心配があります。例えば、こんな例があります。ACE阻害剤という薬を服用中の方が、イチゴ農家で好物ということもあり、毎日朝晩、イチゴを1パックずつ食べていたところ、高カリウム血症を起こし、不整脈が出て病院に運ばれてたいへんだったというものです。いくら野菜が体にいいからといって、ACE阻害剤やARBと呼ばれるグループの降圧剤などを服用している人はカリウムの摂取量を調整しないと、高カリウム血症を招きかねないので要注意です。
このほかにもカリウムを高める薬はいろいろあるので注意が必要です。

寺尾:普段の食事でどうしても野菜不足になりがちな人が、カリウムを多く含むサプリメントを利用するのは理にかなったことですが、ただし、薬を服用している人は薬の種類によっては、その分量に気をつけなければいけないというわけです。

堀:カリウムを多く含むサプリメントは青汁やクロレラなどいろいろあります。含有成分とその分量がきちんと表示されていれば、注意のしようもあるのですが、これもまた徹底していないのが実情です。なお、ある種の抗菌剤(ニューキノロン系やテトラサイクリン系抗菌剤など)を使用している人ではミネラルを一緒に摂取すると、抗菌剤もミネラルも体内に吸収されにくいとされます。この場合、2時間ほど時間をずらして摂取することが肝心です。

寺尾:サプリメントと薬の相互作用に関する注意としては、一緒に摂取してもいいけれど、分量について注意が必要なもの、また一緒に摂取することを避けなければいけないものと、大きくふたつのケースがあるようですね。

堀:さらに、相互作用というわけではありませんが、薬を服用することによって不足してしまう栄養素や体内物質に注目することも大切です。コレステロールとCoQ10は体内でほぼ同じ経路をたどって生成され、途中で枝分かれしてそれぞれの成分となります。ですから、コレステロールを低下させる薬によって生成経路の上流を遮断すると、CoQ10の生成も減少することになります。すると、疲れやすくなったり、むくみやすくなったり、いろいろ障害が出る原因になります。

寺尾:コレステロールの低下薬を服用する場合は、CoQ10を補充する必要があるということを知っていれば、新たな問題を起こさずに済むというわけです。


欧米の多くの国では学校教育で薬やサプリメントの勉強をするようなシステムに

堀:メーカーとしてサプリメントと薬の相互作用に関するデータベースをもち、コールセンターなどを設けて、販売者や消費者側からの問い合わせにキメ細かく応えてくれるようだと理想的なのですけどね。もちろん、自分の健康は自分で守るという姿勢に基づき、消費者各人が、サプリメントや薬についてきちんとした知識をもつことが大切なのはいうまでもありません。サプリメントは賢く上手に使うことで、そのパワーをいかんなく活用できます。

寺尾:誰でも健康で長生きしたいという思いは同じわけで、生活習慣病の予防・改善やアンチエイジング(抗老化)に関心をもつ人は非常に多いように思います。繰り返しますが、メーカーとして、こうした要望に応えるサプリメントや薬に関する情報の提供をどのようにするかが、これからの大きな問題になりますね。

堀:サプリメント先進国である欧米の国々と日本の違いをひとつ挙げるとしたら、健康に関する教育でしょうね。教育といえば、学校教育、家庭教育、社会での教育が3本柱ですが、欧米の多くの国では学校教育で健康に関するカリキュラムの一環として薬やサプリメントの勉強をするようなシステムになっています。薬局や薬剤師の仕事はどういう仕事であるかを記述した厚い教科書などもあります。フランスでは幼稚園で薬の勉強をはじめているところもありますし…。日本でも学校教育のなかにこの分野の勉強がぜひとも入ってきてほしいと思います。

寺尾:日本では主にマスコミが情報源で、健康になってもらうための教育的側面よりも、モノを売るための経済的側面の方に重きが置かれているので、トータルな知識の確立にはなかなか結びつかないのが実情ですからね。

堀:希望的観測かも知れませんが、40~74歳の人を対象とする特定健診(メタボ検診制度)が円滑に、そして特定保健指導が徹底して実施されていけば、食事や運動など生活改善への知識や活動も高まり、随分見通しは明るいとは思うのですが…。これはどうなるのか、今はまだよくわかりませんが、対象になる方には積極的に受けてほしいと思いますね。

寺尾:薬事法の関係でサプリメントの効果・効能については表示できないわけですが、私としては、医師や薬剤師やサプリメントアドバイザーなど健康管理に関わる皆さんに、各種データに基づくエビデンスをしっかり理解していただくことで、個々の消費者へとつながるものと大いに期待しています。それだけに、現状においてはまず、“インフォーム・トゥ・プロフェッショナル”がとても重要であると確信しています。

堀:以前、医薬分業事情をリポートするために韓国を訪れたのですが、薬局でもサプリメントがたいへん多く扱われていました。そして、薬剤師は別でしたが、サプリメントを販売する者は一定の教育を受けることを法律で義務づけられていました。日本の薬局やドラッグストアにしても、ただ製品を並べるというのではなく、消費者の皆さんにきちんとした情報を提供したいと考えているところは多いはずです。メーカー側から各種のデータを提供してもらえることは販売者側が勉強するうえでとても役立つことでして、とりわけ、安定・安全性についてはより充実させてほしいと思います。サプリメントは食品です。そして、普段の食事で不足しがちな物質をサプリメントで補給するというのが基本です。そのため、継続して使うことが多いだけに、安全・安定性への要求度が高くなるのは当然のことなのです。

寺尾:もっともな話で、この点について真摯に受け止めていないようなメーカーは存在する価値がないと明言できます。これからも、メーカーと消費者の間に立つ立場からの意見や情報をお聞かせください。3回にわたって、いろいろお話いただきましてありがとうございました。

終わりに

堀:普段の食事で不足しがちな物質をサプリメントで補給するというのが基本です。継続して使うことが基本なだけに、安全・安定性への要求度が著しく高くなるのは当然といえます。

寺尾:医療や薬剤師、サプリメントアドバイザーなど健康管理に関わる皆さんに、各種データに基づくエビデンスをしっかり理解していただくことで、個々の消費者へとつながるものと期待しています。

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