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ポリアミン

ポリアミンはアミノ酸から作られるプトレッシン、スペルミジン、スペルミンなどのアミン類の総称です。ポリアミンは全ての生物の細胞に含まれており、細胞増殖など様々な生命活動の維持に関与しています。食品では、納豆や醤油、味噌などの大豆発酵食品に多く含まれています。
ポリアミンには、髪や爪などの健康に関わるケラチンの産生促進効果*1や、発毛促進効果*2、関節炎の改善作用*3、抗老化作用*4、認知症の予防効果*5など様々な機能が報告されており、ドリンク剤や健康食品としても利用されています。

また、ポリアミンは正常な生殖過程の進行のために不可欠な成分と考えられています。その理由は、ポリアミンの欠乏は男性の性機能においては精子の分化を妨げ、女性の性機能においては妊娠中の胚の子宮内発育遅延を引き起こすことなどが報告されているためです*6。また、ポリアミンは私たちヒトの体内でも作られていますが、体内のポリアミン量は加齢とともに減っていくことがわかっています。これらのことから、ポリアミンの摂取は男性、女性の生殖機能において非常に重要と考えられています。

ポリアミンの健康効果
  • ケラチンの産生促進効果(髪や爪などの健康に関係)*1
  • 発毛促進効果*2
  • 関節の炎症抑制効果*3
  • 抗老化効果*4
  • 認知症の予防効果*5
  • 男性の性機能(精巣機能)の維持・改善*6
  • 女性の性機能(卵巣機能)の維持・改善*6
ポリアミン(スペルミジン)

*1:特許第5877980号

*2:Fabio Rinaldi et al, Dermatol Pract Concept, 7(4), 17 (2017).

*3:Hao Yuan et al., J Inflamm Res, 14, 2713 (2021)

*4:K. Soda et al., Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi, 61(12), 607-624 (2014)

*5:S. Schroeder et al., Cell Reports 35, 108985 (2021)

*6:P.L.C. Lefèvre et al., Endocrine Reviews, 32(5), 694–712 (2011)

原料の詳細情報

ポリアミンはタンパク質合成や細胞増殖などに必要な物質であり、体内ではプトレスシン、スペルミジン、スペルミンという3種類のポリアミンが作られています。しかし、体内のポリアミン合成量は、加齢に伴って減少していくため、納豆や醤油、味噌などの大豆発酵食品やサプリメントなどによって補給する必要があります。
ポリアミンは、生命の維持や新陳代謝に必要な機能を有しており、なかでも髪や爪などに関する美容効果、発毛促進効果、関節炎の改善作用などの効果があると期待されています。

ポリアミンの効果についての研究情報

ポリアミンによるケラチン産生促進作用

ポリアミンはタンパク質合成や細胞増殖などに必要な物質であり、角化細胞(ケラチノサイト)を活性化し、ケラチンの産生を促すため、皮膚や毛髪、爪の状態を改善する効果が期待できます。
ケラチノサイトにおけるポリアミンの効果については、正常ヒト表皮由来ケラチノサイトおよびマウスを用いて検証が行われ、2011年に特許が出願されています*1。マウスの研究では、マウスにポリアミン混合物(スペルミジン:スペルミン:プトレスシン=7:2:1)10mg/kgを1日1回9日間経口投与した。指の組織を取り出して、ケラチン産生の指標であるケラチン1の発現量を調べています。その結果、ポリアミン混合物を摂取したマウスは、摂取していないマウスと比べ、ケラチン1発現が有意に増加することが分りました(下図)。

ポリアミンによるケラチン1発現促進効果より改変
ポリアミンによるケラチン1発現促進効果*1より改変

*1:特許第5877980号

スペルミジン摂取による毛包成長期の延長作用

ポリアミンの一つ、スペルミジンは毛包の成長期を延長させる効果を持つため、脱毛に有益な作用を発揮することが期待できます。髪の毛は、脱毛して新しい髪の毛が生えるための準備をする期間(休止期)、髪の毛が生えて成長する期間(成長期)、髪の毛が成長しなくなり、抜けるための準備をする期間(退行期)といったヘアサイクルを繰り返しています。健康な状態であれば、髪の毛が伸びている期間である成長期は2~6年ですが、頭皮に問題を抱えると成長期は短くなり、薄毛になってしまいます。スペルミジンは毛包の成長期を延長させる効果をもつことが報告されています*2。この研究では、試験デザインとして健康な男性と女性100名を、スペルミジン含有タブレットを摂取するグループとスペルミジンを含まないタブレット(プラセボ)を摂取するグループにわけて、90日間摂取後のそれぞれの効果を調べています(1日1回、主食の後に服用)。その結果、スペルミジンを摂取すると、成長期の毛球数が増えることが分かりました(下図)。成長期の毛球数が増えることは成長期が延長していることを示唆しています。

スペルミジン摂取による成長期の毛球数増加作用より改変
スペルミジン摂取による成長期の毛球数増加作用*2より改変

*2:Fabio Rinaldi et al, Dermatol Pract Concept, 7(4), 17 (2017).

スペルミジンによる関節の炎症抑制効果

スペルミジンはマクロファージの活性化を抑制して抗炎症効果を示すため、関節の炎症反応を抑制することが期待できます。関節炎は、加齢をはじめ、過度な運動、関節リウマチ、肥満などが原因で起こる関節の炎症で、腫れや痛みが生じます。スペルミジンは関節の炎症を抑制させる効果をもつことが報告されています*3。この研究では、関節炎モデルマウスに、スペルミジン(50mg/kg)または生理食塩水(スペルミジンなし)を21日間毎日投与し、関節の炎症性に対する効果を調べています。関節炎の評価については、関節の腫れや赤みの程度によってスコア化しました(関節炎スコア)。関節炎スコアが4以上の場合、関節炎を発症しています。その結果、生理食塩水を投与した場合と比べ、スペルミジンを投与した場合は、関節炎の程度が低減し、関節炎を抑制することが分かりました。

スペルミジンによる関節炎スコアの低減効果より改変
スペルミジンによる関節炎スコアの低減効果*3より改変

*3:Hao Yuan et al., J Inflamm Res, 14, 2713 (2021)

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